ホームランド シーズン4の背景
『シーズン4の初回放送は2014年10月。パキスタン・イスラマバード支局を舞台に、ISI(軍統合情報局:パキスタンの諜報機関)との駆け引き、タリバンとの戦いが描かれます。
背景にあるのは、アメリカとパキスタンの「最悪の関係」です。そのきっかけは2011年5月。米軍特殊部隊によるアルカイダの指導者ウサマ・ビン・ラーディンの殺害です。ビン・ラーディンはパキスタン北東の隠れ家に潜伏していましたが、米軍はこの作戦をパキスタン軍に伏せたまま実行しました。なぜなら、事前に知らせるとISIがビン・ラーディンを逃がす。そう考えていたからです。当然、パキスタンは主権侵害を主張。ISI長官、首相も関与を否定し、アメリカとの関係見直しを公言しました。
アメリカは7月、年間20億ドルに上る対パキスタン軍事援助のうち、最大8億ドルを凍結。9月にはアメリカ統合参謀本部議長が上院軍事委員会でパキスタンを公然と非難。「パキスタン政府の代理人としての過激派組織が米兵及びアフガン軍と市民を殺害している」と述べ、「(タリバン有力グループの)ハッカーニー・ネットワークはISIの戦略的一翼を担っている」と述べました。
ハッカーニー・グループとパキスタン軍との関係については、10月21日、パキスタンを訪問したクリントン米国務長官が、北ワジーリスターンを拠点としている「裏庭の蛇たち」(ハッカーニー・グループのこと)に対して断固たる態度をとるよう要求。これに対してパキスタン側は肯定的な返事をしませんでした。
また11月末には、NATOのアフガン国際治安支援部隊(ISAF)が、越境爆撃で24人のパキスタン兵を殺害。アメリカは遺憾の意を表したものの謝罪を拒否。パキスタンは報復措置としてアフガニスタンとの国境を封鎖し、ISAFへの物資輸送を停止。。さらにバルーチスターン州のシャムシ空軍基地からの米軍の撤収を求めた。
第11話のタリバンの大使館襲撃後、「アメリカはこの国で好き勝手なことをしすぎた。報いを受ける時よ」と、タスニーム・クレイシが呟いたのには、こういう背景があります。また、このドラマではパキスタンの米国大使館が襲われますが、2011年9月、タリバンはアフガニスタンの首都カブールの米国大使館、NATO本部、警察署を襲撃。9名が死亡しています。
ホームランド シーズン4のあらすじ
()ネタバレを含みます。ドラマを見て確認したいことがあった時などにお役立てください。
キャリーは娘を姉に預けてカブール支局長に、ソールはCIAを退職して民間警備会社の幹部となっている。ある日、パキスタン支局長サンディの情報提供により、CIAはタリバンの指導者ハッカニを無人機で爆撃する。しかし多くの民間人が巻き添えとなり、CIAは政治的な打撃を受ける。事態収拾のため、キャリーはパキスタンに飛ぶが、怒る群衆にサンディは殺されてしまう。イスラマバード支局長に着任したキャリーは、クインと協力して調査を進める。
ソールは訪れたパキスタンでタリバンに誘拐される。空爆の失敗は巧妙に仕組まれた罠であったこと、パキスタン政府の一部がタリバンと通じていることが明らかになる。生きていたハッカニはソールと仲間との人質交換を求め、陽動作戦を起こしてアメリカ大使館を襲撃する。多くの大使館員やCIA職員が犠牲となり、クインとキャリーはハッカニを殺そうとするが、CIA幹部ダール・アダルとハッカニが平和的に同席するのを見て思いとどまる。
ホームランド シーズン4の登場人物
()ネタバレを含みます。
キャリー・マティソン
(クレア・デインズ)
アフガニスタンのカブール支局長を務めていたが、ハッカニへの無人機空爆に端を発したサンディ撲殺事件後にロックハートを脅してイスラマバード支局長に就任。サンディが独断で運用していた情報提供者を捜して真相を突き止めるため、マックスとファラを呼んで大使館外に非公式の作戦チームを編成。やがてハッカニの生存が判明すると、彼の甥の医学生アーヤンを誘惑して行方を追う。支局の古参スタッフには信頼されず、クインやファラには独断専行の指揮を非難されて孤立。すり替えられたクスリによって街で錯乱状態になりアーサー・カーンに保護されるなど危なっかしいが、ハッカニの捕虜となったソールを奪還。36名の命が奪われた大使館・CIA車両襲撃でも生き延びて帰国。クインの想いに気づき、応えようとするが……。
ソール・ベレンソン
(マンディ・パティンキン)
CIA退官後は民間の軍事関連会社に転職し、ニューヨークに在住。2年はここで暮らすと約束したミラに仕事の不満を話していた矢先、CIA支局長の撲殺事件が発生。キャリーの要請で民間の護衛チームをイスラマバードへ送り、現地では大使館の封鎖解除交渉、ISIからの情報収集等でキャリーをフォローする。しかしタスニーム・クレイシの罠にはまり、空港で拉致されてハッカニの捕虜に。隠れ家から自力で脱出し「逃げ切れずに捕まったら始末してくれ」とキャリーに頼むが聞き入れられず、再びタリバンの手に堕ち、命と引き換えにタリバンの幹部5名が釈放された。帰国後は民間企業を解雇されCIAへの復帰を望むが、ハッカニに撮影された捕虜姿の映像の存在が暗い影を落とす。
ピーター・クイン
(ルパート・フレンド)
サンディの撲殺事件後にイスラマバードから帰国。飲んだくれてアパートの管理人と関係を持ち、傷害事件を起こすな荒んだ日々を送り、ダール・アダルに「キャリーに特別な感情を持っている」と指摘されて激しく動揺する。そんななか、サンディの撲殺はISIの策略だと気づき、イスラマバード支局長になったキャリーの極秘作戦に参加した。大使館襲撃事件後はISIから殺害命令が出ているにもかかわらず単独でハッカニを追い、アストリッドの協力を得てC4爆弾での暗殺を謀るが、現場にキャリーがいたため断腸の思いで断念した。帰国後、キャリーに「CIAを辞めて一緒に歩んでいこう」と伝えたが、想いは報われないと感じ、イスラム国のテロリスト3人をシリア北部で排除する作戦に参加するため出国した。
ダール・アダル
(F・マーリー・エイブラハム)
CIA幹部で秘密工作の専門家。ロックハートは支局長の器ではないと考えていて、国務長官に働きかけソールの復帰を後押しする。ソールの拉致、パキスタンでの大使館襲撃では目立った動きはなかったが、捕虜交換の完了後、極秘にパキスタンに入ってハッカニと交渉。CIAの暗殺リストから外す代わりに、ソールが捕虜になった時の映像の引き渡しと、アフガニスタンにおけるテロリスト育成の禁止を約束させた。帰国後はただちにソールに会い、映像を記録したメモリカードを渡し「CIA長官になって我々を導け」と説得した。
アンドリュー・ロックハート
(トレーシー・レッツ)
CIA長官。ソールの拉致を受けてイスラマバードへ。大使デニス・ボイドとともにパキスタンの代表団と会談し、パキスタン軍・ISIとタリバンが協力関係にあると指摘。「パキスタンの二枚舌がこの状況を招いた最大の要因」とし、ソールを速やかに連れ戻さなければ年間20億ドルの援助を考え直すと言い放って代表団を激怒させた。保身しか考えていないなど陰口を叩かれることが多い長官だが、ソールと捕虜の交換を成功させ、タリバンによる大使館襲撃時は人質にされたファラの命を守るため、シェルターを開けて協力者リストを渡した。帰国後に辞任を表明。
ファラ・シェラジ
(ナザニン・ボニアディ)
金融を専門とする分析官。イスラム教徒。サンディ撲殺事件の真相を追究するため非公式作戦を始動させたキャリーに請われてイスラマバードへ。ロンドンから来た取材記者を装ってアーヤンに接触。危険地帯でもリスクを冒して追跡を敢行し、死んだと思われていたハッカニの生存と居所を突き止めた。クインとマックスは広い視野と抜群の記憶力を高く評価していたが、キャリーとはアーヤンの運用を巡って対立。褒め言葉を聞けないまま、大使館襲撃事件で死亡した。
マックス
(モーリー・スターリング)
フリーランスの技術者で盗聴・監視のスペシャリスト。キャリーに呼ばれてイスラマバードへ。作戦を担いながら、分析官として成長を続けるファラを温かく見守る。寡黙な男だが、大使館襲撃事件後は危険な作戦にファラを参加させておきながら褒め言葉のひとつも言わなかったキャリーを責め、ハッカニへの復讐に燃えるクインに協力する。
サンディ・バークマン
(コリー・ストール)
パキスタンのCIAイスラマバード支局長。独自に運用している協力者の正確な情報によって多くの成果をもたらしてきたが、民間人を巻き込んだハッカニの爆撃後、協力者に裏切られ、アメリカに対する憎悪を燃え上がらせる民衆に撲殺される。その後、CIAの機密情報をISIに渡していたことが判明した。
ジョーダン・ハリス
(アダム・ゴドレー)
イスラマバード支局に在籍し、サンディの下で働いていた優秀な諜報員。サンディが外部(ISI)に機密情報を漏らしていることをロックハートに報告し、キャリアを奪われた。
ジョン・レッドモンド
(マイケル・オキーフ)
イスラマバード支局の諜報員。サンディの後任を託されながら数日で撤回されたため、ことあるごとにキャリーに反抗。非公式の作戦を進めるキャリーの行動を監視する。それでもCIA職員としての使命を果たし、ハッカニの追跡とソールの救出に貢献するが、タリバンによるロケット弾爆撃によって命を落とした。
ハッカニ
(ヌーマン・アジャル)
CIAの暗殺リストの上位に名を連ねるタリバンの指導者。パキスタンでのドローン爆撃で死亡したと思われていたが生存。協力関係にあるISIから引き渡されたソールを捕虜にして、アフガニスタンのバグラムに収監されているタリバンの幹部4名の釈放を要求。捕虜交換後はCIA車両と大使館を強襲し、CIA職員や警察官、兵士など36名を殺害。イスラマバード支局に保管されていたCIAの協力者リストを強奪した。アメリカを憎悪しているがダール・アダルと取引をして捕虜となったソールの映像を提出。ソールともここから長い付き合いになる。
アーヤン・イブラヒム
(スラージ・シャルマ)
イスラマバード・オンマヤ医科大学の学生。ハッカニの甥。アメリカの軍のドローン爆撃で母と妹を喪った。恋人の父親によって大学のクスリを横流ししていたことがバレて退学処分となり、ロンドンの記者を装ったキャリーにクスリをハッカニに届けていたことを打ち明ける。そしてキャリーの手引きでロンドンへの移住を目指すが諦めざるを得ない状況になり、アフガニスタンへ入るためにハッカニを頼り、射殺された。
キラン
(シャバニ・セス)
アーヤンの恋人で看護学生。大使館襲撃事件後、アーヤンを殺したハッカニの暗殺に協力してほしいとクインに頼まれ、ハッカニの潜伏先でデモをおこした。
ラヒム
(アクシャイ・クマール)
アーヤンの友達。アーヤンが撮影していたアメリカの無人爆撃時の動画を、無断でネットで公開。アーヤンの人生を大きく狂わせた。
タスニーム・クレイシ
(ニムラト・カウル)
アメリカを陥れるための作戦を指揮するパキスタン軍統合情報局(ISI)の工作員。サンディを操ってハッカニのいない屋敷を無人機空爆し、ファルハド・ガージを使ってサンディを殺害。ガージを追っていたソールを拉致してハッカニへ引き渡した後は、デニス・ボイドをスパイとして運用。CIAの指揮系統を混乱させるためキャリーが服用するクスリをすり替えさせた。そしてデニスの自尊心をくすぐって大使館の秘密通路の情報を引き出し、アメリカに大打撃を与えた。大使館襲撃の報を受け、すぐに軍を向かわせようとしたアーサーに彼女は言った。「アメリカはこの国で好き勝手なことをしすぎた。報いを受ける時よ」
アーサー・カーン
(ラザ・ジャフリー)
パキスタン軍統合情報局(ISI)の大佐。テロ対策部長。サンディの死の真相を調べるソールと会談。若いが思慮深く聡明で、タスニーム・クレイシほどにはアメリカを憎悪しておらず同盟は必要だと考えている。キャリーとは縁があり、すり替えられた薬物によって街で混乱し警察に連行された彼女を自宅に保護。クスリを入れ替えた裏切り者が大使館内にいることを教えた。大使館襲撃事件後はハッカニの射殺を謀ったキャリーを制止し、ハッカニと交渉していたダール・アダルを救った。
ブンラン・ラティーフ
(アート・マリック)
パキスタン軍統合情報局(ISI)の元中将。ソールとは旧知の仲で、「信頼できるISI幹部と話したい」と頼まれ「今は誰も信頼すべきではない」と忠告した上でアーサー大佐を紹介。パキスタンの名誉と国益守るため毅然とした態度でアメリカとの会談に臨み、タスニーム・クレイシの謀略には関与していない様子。
ファルハド・ガージ
(タマー・ブルジャック)
パキスタン軍統合情報局(ISI)が雇う暴力要員。サンディを暴動に見せかけて殺害した。
マーサ・ボイド
(ライラ・ロビンス)
アメリカの駐パキスタン大使。ビン・ラーディンの抹殺以降、最悪の状況にある同盟国での仕事が、ホワイトハウスでは正当に評価されないことに空しさを覚えている。ソール(若い頃、婚約していた時期がある)の拉致を受けてやってきたロックハートが一方的にパキスタンへの援助中止を伝えて代表団を脅した時には、大統領の外国政策をなぜ大使に知らせないのか!?と怒りをあらわにした。論文を盗用するほど落ちぶれた夫デニスへの愛情はすでになく、機密情報を外部に漏らして留置場に入れられた彼の願いを聞き、憐憫の想いで自死を幇助したが……。
デニス・ボイド
(マーク・モーゼス)
マーサ・ボイドの夫。パキスタンの大学教授。パキスタンでの生活にウンザリしていてアメリカの大学への復帰を考えていたが、マーサのPCから機密情報を盗みサンディに渡していたことを知るISIのタスニームに脅され、CIA諜報員たちの動きを探るスパイに。キャリーを帰国させるため部屋に忍び込んで向精神薬を劇薬にすり替え、大使館の地下通路のことを漏らしてタリバンのCIA襲撃を招いた。国家反逆罪で裁かれるのは耐えられないとマーサに乞い、留置場で自死する道を選んだが……手錠でつながれて生きたまま帰国した。
アストリッド
(ニナ・ホス)
クインの元恋人でドイツ連邦情報局職員。タリバンが使用している携帯電話の製造番号からハッカニの潜伏先を特定し、C4爆弾の製造場所を提供するなど、ハッカニへの復讐に燃えるクインに力を貸す。
マギー・マティソン
(エイミー・ハーグリーヴス)
キャリーの姉。精神科医として多くの患者を抱えながら子どもを育てている。仕事を理由に育児から逃げるキャリーに腹を立てながらも、シッターを雇いフラニーの面倒もみている。
フランク・マティソン
(ジェームズ・リボーン)
子煩悩で孫のフラニーを心から愛して可愛がっていたが、キャリーの帰国を待たず脳卒中で亡くなった。
エレン・マティソン
(ビクトリア・クラーク)
キャリーの母。子どもを授かった時に現実と向き合えずに複数の男を作り、キャリーとマギーを捨てて出ていった。夫とはすでに別れていて、今はミズーリ州にキャリーとは腹違いの弟(15歳)と暮らしている。帰国後、訪ねてきたキャリーに双極性障害でも人と付き合っていけると断言する。
エデン
(エミリー・ウォーカー)
クインが住んでいるアパートの管理人。CIAの仕事に嫌気が差して酒浸りの日々を送るクインの話し相手になる。
ミラ・ベレンソン
(サリタ・チョードリー)
ソールの妻。ニューヨーク在住。
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