ホームランド シーズン8(最終章)の背景
ホームランドシーズン8(最終章)のアメリカでの初回放送は2020年2月。その背景にはアメリカ合衆国とタリバンの和平交渉、タリバンとアフガニスタン政府との捕虜交換交渉があります。
米軍は2001年9月のアメリカ同時多発テロの直後、国際テロ組織アルカイダをかくまっていたとしてアフガニスタンへ侵攻。タリバンは政権を失いましたが、その後勢力を回復しました。
合衆国史上最長の18年に及ぶ戦いで米軍の戦死者は2,400名を超えており、アメリカは2019年9月、タリバンとの原則的な合意に基づいて20週間以内に5,400名を撤退させると発表。タリバンによる米兵殺害事件によってトランプ大統領は協議の中断を表明しましたが、両者の話し合いは水面下で続けられてきました。
そして2020年2月29日、アメリカ合衆国とタリバンはカタールで合意文書に署名。米軍の撤退とともにタリバンとアフガニスタン政府の捕虜交換(タリバン5,000名、アフガニスタン治安部隊1,000名)が盛り込まれましたが、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は、タリバンの捕虜解放については約束していないと表明。
結果、タリバンとアフガニスタンの交渉は、2020年4月7日に打ち切られました。経緯は違いますが、このホームランド8はアメリカ、タリバン、アフガニスタンの近い将来を予見していたと言えるでしょう。
ロシアはISIL(イスラム国)が勢力を拡大した2015年頃からタリバンへの軍事支援を始めたと言われています。合衆国との和平についても、モスクワにタリバンの代表を招いて交渉再開の必要性を説いている(2019年9月)ことから、タリバンを通じてアフガニスタンへの影響力を高めたいと考えている、というところでしょうか。
ホームランド シーズン8(最終章)の登場人物
()ネタバレを含みます。ドラマを見て確認したいことがあった時などにお役立てください。
キャリー・マティソン
(クレア・デインズ)
捕虜交換によってロシア・モスクワ刑務所での213日間に及ぶ拘束から解放された。ドイツ・ラントシュトワールのアメリカ陸軍地域医療センターでの治療中にソールに請われ、国家安全保障担当補佐官付きの外部職員としてCIAカブール支局へ着任。アフガニスタン・タリバンの和平工作、国家の存亡に関わる事故の真相究明調査に臨む。
ソール・ベレンソン
(マンディ・パティンキン)
国家安全保障担当補佐官。アフガニスタン、タリバンとの和平を実現させるため、タリバンの指導者ハッカニと交渉。和平を望まないアフガニスタンの副大統領グロムと繋がっているISI(パキスタン軍情報機関)の妨害を受けながらも、悲願の成就まであと一歩のところまでこぎ着けるが……。
ラルフ・ワーナー
(ボー・ブリッジズ)
合衆国大統領。性格は、温厚で思慮深いうえに豪胆。先を見通す目も確かで、ソールやキャリーにとっては最も望ましいリーダーと言えたが、ソールが進めてきた和平交渉が大詰めになったことを受け、最前線で戦ってきた兵士たちと語るためにアフガニスタンに入り……。
ベンジャミン・ヘイズ
(サム・トランメル)
合衆国副大統領。次期大統領選に出馬の意向を示していたが、ワーナーの代行として大統領に就任。状況判断が利かず、決断力に欠けるうえに見栄っ張りという厄介な性格。知識と経験のなさを露呈してソールやウェリントンを何度も呆れさせ、時を同じくしてアフガニスタン大統領となったグロムにはいとも簡単につけ込まれて舵取りを誤る。
ジョン・ゼイベル
(ヒュー・ダンシー)
ヘイズの大統領就任に伴いホワイトハウスで仕事を始めた外交政策コンサルタント。従軍経験のない軍事マニアで、中東の状況分析力は皆無。情報の取扱い方やバック・チャンネルでの交渉の進め方もわかっていないため、ソールとウェリントンにはまったく信頼されていない。
デヴィッド・ウェリントン
(ライナス・ローシェ)
大統領首席補佐官。美しい女性に貶められて政権を危機に陥れた過去があるが、キーン、ワーナーに続いてヘイズにも仕える。舵取りを間違っていると分かっていながら保身のためにヘイズへの忠誠を示し、ソールとは距離を置く。
ハッカニ
(ヌーマン・アジャル)
アフガニスタンの反政府武装勢力・タリバンの指導者。パキスタン大使館を襲撃してファラ・シェラジを含むCIA職員30数名を殺害。合衆国全体を敵に回した(シーズン4)。しかし以後、ソールとは信頼関係を築いており、あまりにも長い戦いの日々に空しさを感じ始めたことから和平に傾いていく。
ジャラール
(エルハム・イーハス)
ハッカニの息子。合衆国、アフガニスタンとの和平には反対で、ISIのタスニーム・クレイシと共謀。ハッカニの後継者として戦争を継続をするという野望は一度頓挫するが、ヘリ墜落事故によって状況は一変。タリバンの戦士たちの心に空いた空白を埋めることに成功する。
バラチ
(シアー・コヒー)
ジャラールが赤ん坊の頃から側近としてハッカニを支えてきたタリバンの戦士。和平には賛同していて、戦いを忘れ、2人の子ども、妻と平和に暮らすことを望んでいる。
アガ・ジャーン
(ケボルク・マリキヤン)
タリバンの幹部。合衆国、アフガニスタンとの和平交渉の代表としてカタールへ出向く。
アブドゥル・カディル・グロム
(モハマド・バクリ)
アフガニスタン副大統領。キャリーとは旧知の関係。タリバンとの和平を望まず、ISIのタスニーム・クレイシと共謀してアメリカの介入を妨害する。ソールの工作によってアフガニスタンから合衆国とタリバンを排除するという野望は潰えたかと思われたが……。
タスニーム・クレイシ
(ニムラット・カウル)
ISI(パキスタン軍統合情報局)の幹部。正義を振りかざして他国に介入するアメリカを嫌っていて、ソール、キャリーとは彼らのCIA時代から敵対関係にある。アフガニスタン副大統領グロムと組み、タリバンの指導者ハッカニの息子ジャラールを操ってソールの和平工作を妨害する。
ブンラン・ラティーフ
(アート・マリック)
ISI(パキスタン軍統合情報局)の元中将。通称バニー。タスニーム・クレイシの父。アメリカの振る舞いには憤怒しているが好戦的な性格ではなく、ソールとは旧知の仲。
マックス
(モーリー・スターリング)
フリーランスの技術者で盗聴・監視のスペシャリスト。ファイヤーウォール、ネットワークにも強い。ソールの指令を請けてアフガニスタン・コレンガル渓谷のスティードリー前哨基地へ着任。敵の攻撃をかいくぐって国境付近の盗聴器を修理するという困難なミッションを成功させる。以後、若い兵から”ラッキーボーイ”と崇められるが……。
マイク・ダン
(リフ・チェンバレン)
CIAカブール支局長。キャリーはカブール支局在籍時代の上司。アリソン・カーという前例があったせいか、ジム・トゥーロの報告を真に受けてキャリーはロシアのスパイになったと決めつけ、彼女の行動を監視。柔軟性に欠ける性格も手伝って重大な判断ミスを重ねていく。
ジェナ・ブラッグ
(アンドレア・デック)
CIAカブール支局の新人諜報員。信念に従って迷わず行動し、マイク・ダンを手玉にとるキャリーに惹かれるが、合衆国と協力者を守るためには手段を選ばない彼女に何度も利用され、屈辱を味わう。
スコット・ライアン
(ティム・ギニー)
CIA特殊工作部隊の幹部。ソールの作戦の多くに参加してきた。
ジム・トゥーロ
(デビッド・ハント)
CIA防諜部門の幹部。ドイツのアメリカ陸軍地域医療センターでキャリーのポリグラフを担当。その結果と、拘束中の後半180日間の記憶が曖昧だという彼女の証言から、キャリーはベイルート関連の機密をロシアに漏らした可能性があるとCIAカブール支局のマイク・ダンに報告する。
ヴァネッサ・クロール
(カレン・ピットマン)
FBI捜査官。カブールと合衆国でキャリーの取り調べを担当する。
エフゲニー・グロモフ
(コスタ・ローニン)
GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)の諜報員。恋人関係だったシモーヌ・マーティンの亡命を許したペナルティでカブールへ。破壊されたモスクの再建や諜報員の勧誘などを行っていたが、モスクワ刑務所で尋問を担当したキャリーとの再会、ヘリの墜落事件によって合衆国を貶めるための手段を変更する。
アンドレイ・クズネツォフ
(セルゲイ・ナジボフ)
元KGB(ソ連国家保安委員会)諜報員。1986年、ソールが東ベルリンで勧誘。ベルリンの壁の崩壊直前、ソールの手引きで合衆国への亡命を図った際に地雷を踏んで片脚を失った。証人保護プログラムの適用を受け、現在はサーナウと名乗ってペンシルバニア州の田舎町で静かに暮らしている。
アンナ・ポメランチェワ
(タチアナ・ムハ)
ソールが東ベルリンでアンドレイ・クズネツォフを勧誘した同時期に、KGB(ソ連国家保安委員会)諜報員相手の語学スクールで英語教師を務めていた。アンドレイの亡命後、生徒たちが同胞に銃殺されたと知って母国に失望。自らソールに接触し、彼を窮地から救った後、ソ連へ帰国。ソ連軍参謀本部情報総局(現GRU)の通訳となった。
シャーロット・ベンソン
(ロビン・マクリービー)
GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)の諜報員。不動産仲介業者を装って合衆国内で工作活動を行う。ヘリ墜落事件後、クレムリンに潜伏しているソールの協力者を洗い出すための切り札を握ったグロモフをサポート。キャリーとの連絡役を務める。
ヴィクター・マカロフ
(エリヤ・バスキン)
駐米ロシア大使。モスクワと合衆国に潜伏するSVR(対外諜報庁)、GRUの諜報員の橋渡し役。
セルゲイ・ミロフ
(メラブ・ニニッツェ)
GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)の幹部。次期大統領候補の筆頭と目されている実力者。通訳のアンナを信頼している。
タジク・カディール
(ジネブ・トリキ)
ハッカニの裁判を担当することになっていた女性裁判官。ソールとタスニームか提供した証拠映像を見て正しい審理をすると約束する。
アーマン
(モハマド・アミリ)
カブールでのキャリーの協力者。運送会社の経営者として成功している。
ラシャド
(サムラット・チャクラバティ)
駐米パキスタン大使。ジャラールの捜索状況についてヘイズとゼイベルに問われ、敵意をあらわにする。
サミラ・ノーリ
(シタラ・アッタイ)
政府の汚職を調査する機関に在籍していたが、グロムの調査を始めたと同時に解雇され、単独で調査を再開した矢先に命を狙われて夫を亡くす。グロムの汚職を追及するためキャリーに協力する。
マギー・マティソン
(エイミー・ハーグリーヴス)
キャリーの姉。親権を得てキャリーの娘フラニーを育てている。
ドリット
(ジャクリーン・アンタラミアン)
ソール・ベレンソンの妹。ヨルダン川西岸地区に設けられたユダヤ人入植地の集合体グーシュ・エツヨンで暮らしている。
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