常冬の大地・ウィアウッドの洞穴
ウィアウッドの洞穴に横たわり、ブラン・スタークは三ツ目の鴉とともに生まれ育った故郷の過去を視る。エダード、リアナ、ベンジェンがまだ幼かった頃のウィンターフェル城だ。そこには厩番を務めるホーダー少年もいて、言葉を発していた。意識を現世に戻したブランは傍らにいるホーダーに言葉を喪った理由を尋ねるが、ホーダーは「ホーダー」としか答えない。
ジョジェンを喪ったミーラは目的を見失い、洞穴の外で景色を眺める日々を送る。そんなミーラに”森の子ら”は「ブランがここを出る時、必ずあなたの力が必要になる」と話す。
キングズ・ランディング
ミアセラの葬儀に向かおうとしたサーセイは、トメン王直属の騎士に行く手を阻まれる。
「太后陛下の安全のため城外に出すなと」
命令の内容を聞いたサーセイは、護衛役のクレガー・クレゲインとともに引き返した。
ベイラー大聖堂に安置されたミアセラの遺体の前で、ジェイミーは「母と話せ」とトメンを諭す。トメンはサーセイが投獄され、辱めを受けても何もできなかったと自分を責めるが、それでもジェイミーはトメンの肩に手を置いて強く伝えた。
「母上に会って許しを求めろ」
その時、正面の扉が開き、雀聖下(ハイ・スパロー)が姿を見せた。
「妻に会いたい」と乞うトメンに「王妃の罪の告白を神々は待っています。王も待たなくてはなりません」と平然と答える雀聖下(ハイ・スパロー)。ジェイミーは「母上に会うのだ」と念を押してトメンと送り出すと、「勇気があるな」と言って雀聖下(ハイ・スパロー)と向き合った。
ジェイミーはサーセイを辱めたことに対する怒りをぶつけ「ならば俺の罪はどうなるのだ?」と問うた。
誓約を破って王を背中から刺し、実の従弟を殺した罪。神々の裁きで有罪となった弟を逃がした罪。
「どうすれば赦される?」
剣に手をかけて答えを待つジェイミーに、雀聖下(ハイ・スパロー)は笑みを浮かべ、事もなげに言った。
「では、やりなさい。私は罪人だ。人は皆そうだ。弱くはかない。慈母のお慈悲で生きている」
次の瞬間、ジェイミーは武装した雀(スパロー)たちに囲まれていた。
「遠くて止められんぞ」
「そう。あなたは私を斬ることができる。そして我々の多くがあなたの剣で斃れるだろう。だがそれが何だ?我々には名前も家族もなく、貧しく非力だ。だが団結すれば――帝国を打ち倒せる」
ジェイミーは踵を返した雀聖下(ハイ・スパロー)をその場で見送った。
トメンはジェイミーに言われたとおり赤の王城(レッド・キープ)へ行き、幽閉していることをサーセイに詫びた。そして自らの弱さを嘆き、強い母に助けを求めた。
ミーリーン
ウエスタロスへ侵攻するために用意していた船は焼き払われ、奴隷商人湾は再び奴隷商人たちのものとなった。そしてデナーリスが行方不明になってから2頭のドラゴンは食糧にいっさい手をつけずにいる。そんな閉塞感を打破するため、ティリオンはヴァリスを伴って地下牢へ行き、2頭のドラゴンに話しかける。そして、重い鎖を首から取り外すことに成功した。呆れ半分、感心半分のヴァリスにティリオンは言った。
「今度俺がこんな提案をした時は、殴ってでも止めろ」
ブレーヴォス
アリア・スタークは路上で物乞いを続けながら、黒と白の館の娘との戦いに挑み、敗れ去る毎日を送っている。
「おまえは何者?」
その声が聞こえたら立ち上がり、棍棒を振り回すが、ただの一撃も加えることができない。
そんなある日、娘が去ったあとも闇雲に振り回す棍棒を受け止めて話しかける男がいた。
「何者だ?」
声の主はジャクエン・フ=ガーだった。
「何者でもない」」
アリアは答える。
「名を言えば、今夜は屋根の下で眠らせてやる」
「何者でもない」
「名を言えば、食べ物をやる」
「何者でもない」
「名を言えば、視力を返してやる」
「――何者でもない」
ジャクエンは棍棒から手を離し、ついて来るように言った。
ウィンターフェル城
サンサ・スタークを取り逃がしたラムジー・ボルトンは、彼女が頼るのは兄のジョン・スノウ以外にない(この時点ではジョン・スノウが死亡したことは知らない)と判断。黒の城(カースル・ブラック)への進軍を提案する。
しかしルース・ボルトンは、冥夜の守人(ナイツ・ウオッチ)を滅ぼせば北部全体を敵に回すことになるという理由でそれを退け「一度狂人のレッテルを貼られたら剥がすことはできん。ろくな死に方をせんぞ」と忠告する。
その矢先、ウォルダが元気な男の子を出産したと報告が入る。いよいよ立場が微妙になったと悟ったラムジーは、祝福の言葉を伝えると同時に、ルースの胸を剣で突き刺した。
そしてその場にいた学匠にルース・ボルトンの死を北部諸家に伝えるよう命じた。敵に毒を盛られて亡くなったと――。
そしてウォルダと生まれたばかりの赤ん坊を犬舎へ閉じ込め、獰猛な犬たちの餌食にした。
北部の森の中
ボルトン家の追撃を逃れたサンサ・スタークは、ブライエニー・タースからアリアのことを聞いて安堵するが、ウインターフェルでの出来事を聞かれると表情を曇らせ「あの時、一緒についていけば良かった」と漏らす。ブライエニーは、野営の準備をしながら「人生は難しい選択の連続です」と慰める。
気を取り直したサンサは命を懸けてラムジーから逃がしてくれたシオンに改めて感謝し、黒の城(カースル・ブラック)で冥夜の守人(ナイツ・ウオッチ)になることをすすめる。しかしシオンは「ジョンに会わせる顔がない」とこれを固辞。故郷の鉄諸島に戻ると決意し、サンサに別れを告げた。
鉄諸島・パイク城
嵐の夜、パイク城に戻ったヤーラ・グレイジョイは、占領していた深林の小丘城(ディープ・ウッド・モット)がグラヴァー家に奪われ、鉄の民の守備隊は全滅した、と父ベイロンに報告。それは鉄の民による本土への侵略が、事実上終わったことを物語っていた。ヤーラは「我らは海では無敵だが、本土で城を守る術を持たない」といい、本土侵略の意味を改めて問う。しかしベイロンは「指揮官どもが命令に背いて勝手に動き部下を無駄死にさせたせいだ」と言い放ち、本土侵略を、ウエスタロスの王となることを諦めようとしない。
そんなベイロンの前に立ち塞がったのは、弟のユーロン・グレイジョイだった。
ユーロンは我こそが溺神だと宣言。「兄上の時代は終わった」と言い放ち、吊り橋からベイロンを突き落とした。
翌朝、ベイロンの亡骸を乗せた船を見送ったヤーラは、必ず犯人を見つけて生きたままサメの餌にすると誓う。しかし、ベイロンの後継者となるには、選王民会で選任される必要があった。
黒の城(カースル・ブラック)
約束の日没を迎え、アリザー・ソーンは守人たちに総帥の部屋の扉を壊せと指示。
(エディソンは間に合わなかったか……)
ダヴォス・シーワースは覚悟を決め、部屋のなかで剣を抜く。
巨人族のウェイウェイとトアマンドを先頭に、野人たちが城内になだれ込んできたのはその時だった。アリザーは迎え撃てと叫ぶが、ウェイウェイの怪力ぶりを目の当たりにした守人らは戦意を喪失して剣を棄てた。
「裏切り者め……!」
吐き捨てたアリザーの言葉をそのまま返し、エディソンは彼らを牢に閉じ込めた。
「何度も刺されたな――」
盟友と言っていいジョン・スノウの亡骸と対面したトアマンドは、静かにそうつぶやき、野人たちに薪を集めさせるといた。亡者(ワイト)となるのを防ぐために。
焼かれてしまったら何もかもが終わる――。そう考えたダヴォスは、メリサンドルの部屋を訪れ、ジョンを蘇らせてほしいと頼む。スタニスに続き、ジョン・スノウも斃れたことで、自らが崇めてきた『光の王』(ロード・オブ・ライト)が見せてくれたものはすべてが虚構だったと嘆くメリサンドル。そんな彼女にダヴォスは言った。
「七神も溺神も木の神も俺には同じ。『光の王』(ロード・オブ・ライト)ではなく、奇跡を見せてくれた女に助けを請うているんだ」
その言葉によって蘇生術を試す決意を固めたメリサンドルは、ダヴォスとエディソン、トアマンドが見守る前で血がこびりついたジョンの身体を丁寧に吹き、呪文を唱えながらジョンの毛髪と髭を炎にくべてゆく。そしてやさしく髪を洗い、無数の刀傷が刻まれている上半身に手を添える――。
やがてメリサンドルはきつく目を閉じ、トアマンドが、エディソンが部屋を出ていった。ダヴォスは最後まで残ってジョンの亡骸を見つめていたが、諦めて扉の向こうへ消えた。
その次の瞬間――眠っていたゴーストが何かの気配を感じて目を覚ました。
そして――ジョンは還ってきた。
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