ドラゴンストーン
ヴァリスはジョン・スノウの出生の事実を七王国に知らしめるため書状の作成を急ぐ一方で、厨房に出入りできる少女マーサを使ってデナーリスの暗殺(毒殺)を謀る。ヴァリスの誤算は、レイガルとミッサンディを喪ったデナーリスが居室に引き籠もってまったく食事を摂らないことだった。
信念に基づいて行動するヴァリスは、ドラゴンストーンに上陸したジョン・スノウにもただちに接触。デナーリスは間違いなく王都を焼き払うと警告し、その前にあなたが王座に就くべきだと進言。しかしジョンはヴァリスの言葉を途中で遮り「彼女は俺の女王だ」と伝える。
高台からその様子を見ていたティリオンは覚悟を決める。デナーリスが王都虐殺を思いとどまると信じてヴァリスを止めるか、王都の人々を守るためにヴァリスの謀を見逃すか。断腸の思いでその選択をしたのだ。
ティリオンはヴァリスの謀をデナーリスに報告する。デナーリスは本当の裏切り者は出生の真実をサンサに明かしたジョン・スノウだと告げる。そして断りなくその秘密をヴァリスに話したティリオンも同罪だと吐き捨てる。
「サンサは信じていたのね。私を滅ぼすことになる情報をあなたが必ず広めると。あなたはサンサの期待に応えたのよ」」
ティリオンは世界をより良くするために行ったことだと弁明し、失望させたことを詫びる。デナーリスはジョンとティリオンの過ちを赦す気になれなかったが、サーセイとの決戦を前にしてできることは、ヴァリスを裁くことだけだった。
居室に近づいてくる複数の足音を聴き、自らの行動を死をもって償うことになるのだと察知したヴァリスは、したためていた書状を燃やし、指輪を外した。
ヴァリスはグレイ・ワームと数人の傭兵に連行され、夜の浜辺でドロゴンの炎によって処刑された。「すまない」と詫びたティリオンに「正しい裁きであってほしいと、心から願います。私が間違っているといい」と言い残して・・・・・・。
デナーリスから受け取ったミッサンディの遺品を暖炉に投げ棄てると、グレイ・ワームは席を外した。ジョンが訪ねてきたからだ。
デナーリスはあなたが出生の真実をサンサに打ち明けたからヴァリスを処刑することになったとジョンを責め、人々が真実を知れば私に対して恐怖しか感じなくなると自嘲する。
それでも愛と忠誠を口にするジョン。口づけを求めたデナーリスは、ジョンの畏怖を感じとっていた。
決戦の日が近づき、ヴァリスの死を無駄にしたくないティリオンは、デナーリスに対して最後の説得を試みる。
サーセイに抗うことができない王都の民は人質と同じ。幼い子どもたちもいるのだからどうか助けて欲しい。敗北を悟れば従者も兵たちもサーセイを見捨てます。彼らにその機会を与えてほしい。王都が降伏したら鐘が鳴り、門が開きます。鐘が聞こえたらただちに攻撃を止めてほしい、と――。
しかしデナーリスは、サーセイは慈悲の心につけ込むと断じてティリオンの進言を受け流し、今夜王都へ向けて発ち、北部軍と合流して合図を待てとグレイ・ワームに命じた。
(俺は最後まで女王の衝動を抑えられないのか・・・・・・)
肩を落として去るティリオンの背中に、デナーリスは告げた。
「我が軍を越えようとしてあなたの兄はとらわれた。結局、サーセイを見捨てることができなかったようね。また私を失望させたら――次はないわ」
ジェイミー・ラニスターを始末しなさいとデナーリスは命じたのだ。
キングズ・ランディング付近
ジョン・スノウとともに海路でキングズランディング付近に上陸した(海路はフリーパス?鉄水軍の姿がないのが不思議・・・・・・)ティリオンは、ダヴォス・シーワースに小舟を用意してほしいと頼んでから味方の野営地へ。”穢れなき軍団(アンサリード)”の見張りを説いてジェイミーがとらわれている天幕に入った。
「サーセイのために戦う」と言い、死の軍団との戦いで疲弊しドラゴンも一頭になった今なら勝機はあると考えているジェイミーに、ティリオンは「王都は明日、陥落する」と断言(何を根拠に・・・というところですけど)。そしてサーセイと二人で逃げろと説得。地下を通って小舟に乗ればうまくいけばペントスに行ける。そこで人生をやり直せと。
ジェイミーは鉄水軍がいる海を抜けてペントスへたどり着けるわけがないと悲観するが、ティリオンは「鉄水軍も消える」と断言(ここも根拠が・・・・・・)。そして、脱出に成功したら王都のすべての鐘を鳴らし門を開けろと指示を出せ。それが王都降伏の合図だ」と言ってジェイミーの鎖を解いた。
「借りを返せるなんて思ってもみなかった」
「自分の女王に処刑されるぞ」
「デナーリスが無血で王座に就けば、それを可能とした者に慈悲を与えるかもしれない。でなければ・・・・・・何千もの罪なき人々のために、罪深き一人の小男が犠牲になるさ」
「・・・・・・」
「おまえのおかげで幼少時代を生き抜くことができた」
「――大げさな」
ティリオンは首を振ってジェイミーを見る。
「おまえだけが・・・・・・俺を怪物扱いしなかった。おまえしかいなかった」
ティリオンはジェイミーを抱きしめ、天幕を出ていった。
これが二人の、今生の別れとなった。
キングズ・ランディング
戦いの口火を切ったのは、太陽を背負い、ブラックウォーター湾上空に飛来したドロゴンだった。ドロゴンは鉄水軍がスコーピオンの標準を合わせる前に急降下し、最初の一撃で3分の1近くの船を焼き払った。
残りの船が急いで方向を変えて狙うが、ドロゴンはそれをあざ笑うかのように急上昇して矢をかわすと、装填する間を狙って再び降下。為す術のない船団を蹂躙した。同じ敵に二度もやられはしないと心得ているかのようなその戦いぶりに、鉄水軍は早くも戦意を喪失する。
鉄水軍を無力化したデナーリスは、矢の装填に時間がかかるという弱点を巧みに突き、城壁に並ぶスコーピオンを兵士もろとも焼き払う。サーセイの頼みの綱と言えた最強の兵器は、ドロゴンに一矢も報いることができないまま沈黙した。ティリオンが断言したとおりに。
「鐘が鳴ったら攻撃をやめろ!」
ティリオンが念を押して送り出した本軍は、ドロゴンの炎で内側から破壊された神々の門(推測です)から城内へ突入した。背後から吹き飛ばされた2万の『黄金兵団』(ゴールデンカンパニー)を蹴散らして、ドスラクの騎馬隊と”穢れなき軍団(アンサリード)”が、赤の王城(レッド・キープ)を目指して進撃する。
赤の王城(レッド・キープ)で状況を見守り、サーセイは歴然とする力差に呆然としながらも、スコーピオンの一撃と傭兵たちの底力に望みを託す。しかしクァイバーンが事実上の全滅を告げると顔色を失う。
キングズ・ランディングの中央でデナーリス軍と向き合ったラニスター軍は、全土に轟くようなドロゴンの咆哮に身をすくめ、潔く剣を棄てる。
ジョン・スノウはホッと息をつき、無血開城を願いながら降伏の合図となっている鐘が鳴るのを待った。
やがて――鐘が鳴り響いた。サーセイはきつく目を閉じ、ジョンは安堵し、ティリオンは願いが届いたと確信した。しかし、デナーリスは戦いをやめなかった。ここからが本番とばかりに目を剥き、歯を食いしばって赤の王城(レッド・キープ)を睨みつけると、翼を休めていたドロゴンを促した。
そしてデナーリスは、逃げ惑う民衆に炎を浴びせた。女も子どもも関係ない。生きている者すべてを建物もろとも灰にする無慈悲な無差別殺人の始まりだった。
それは本軍に対するデナーリスの意思表示でもあった。グレイ・ワームが剣を棄てた敵兵目がけて槍を放つと、両軍は再び戦闘を開始した。ジョンは後退を命じるが、グレイ・ワームは鬼の形相で目の前の敵をなぎ払っていく。まるですべてのラニスター兵がミッサンディの敵であるかのように。
戦いが始まる前に入城できなかったジェイミーは、デナーリス軍の攻撃を避けながら迂回路を進み、ティリオンが小舟を置いた入江から城内への侵入を試みる。
「キングスレイヤー」
先を急ぐジェイミーを呼び止めたのは、ブラックウォーター湾でドロゴンの攻撃を逃れ、自力で泳ぎ着いたユーロン・グレイジョイだった。
王都が滅びゆく音を聴きながらも、サーセイをモノにした自分こそが王であると信じるユーロンは、サーセイにジェイミーの首を届けるために剣を抜いた。崩落する赤の王城(レッド・キープ)の真下で剣と拳を交える二人。ジェイミーは腹部に剣を受けながらもユーロンを叩きのめし、サーセイのもとへ向かう。
アリアとともに民衆に紛れて城内に潜入。赤の王城(レッド・キープ)にたどり着いたサンダーは、今にも崩れ落ちそうな城を見てアリアに言った。
「おまえは引き返せ。サーセイは火に焼かれるか、ドスラク人にやられるか、さもなくばドラゴンに食われるかだ」
それでもサーセイのもとへ向かおうとするアリアの腕を掴み、サンダーは声を荒げる。
「長い間、復讐を望んできたのだろうが、俺のようになりたいのか!?」
サンダーはアリアの頭を撫で、肩を抱いて、背を向けた。
「サンダー」
アリアが呼び止める。
「ありがとう」
火の海と化したキングズ・ランディングを見下ろし、ようやく自らの過ちを認めたサーセイは肩をふるわせ、涙を流す。それでも生への執着は強く、クァイバーンに促されてエイゴルの天守へ向かう。
長い石段を降りる途中、雨のように降り注ぐ瓦礫から身を挺してサーセイを守ったグレガー・クレゲインは、階下から登ってきたサンダーと対峙する。サンダーはサーセイの護衛3名を瞬く間に始末して兄を見上げる。サーセイはサンダーに構わず自分を守れと命じるが、グレガーは一撃でクァイバーンを亡き者にしてサンダーを見下ろす。
状況を察してその場を離れるサーセイ。サンダーは彼女には目もくれず、剣を握り直してグレガーと向き合った。そして石段を登り、剣を交える。勢いよく、力強く繰り出されるサンダー剣は兜を弾き飛ばし、グレガーの顔があらわになる。
「そうだ。それがおまえだ。おまえはずっとそうだった」
一人になり行き場を失ったサーセイは、瓦礫の向こうから現れたジェイミーを見て激しく嗚咽し、すがりつく。ジェイミーはサーセイを抱きかかえ、入江へ向けて歩き出す。赤の王城(レッド・キープ)の崩落はもはや時間の問題で、一刻の猶予もなかった。
火花が散るような応酬の末に、サンダーの剣は鎧の上からグレガーの胸部を貫いた。常人なら鮮血を吹いて息絶えているところだが、サンダーはクァイバーンの死霊魔術(ネクロマンシー)によって不死身となったグレガーの強烈な拳を浴びて石段を転げ落ちた。剣を引き抜いて投げ棄て、よろめきもせず迫ってくるグレガーに、サンダーはため息を漏らす。
(化け物が・・・・・・!)
後方に投げ飛ばされたサンダーは、グレガーの岩のような拳を受けて悶絶する。逃れようとしても引きずり戻され、拳で骨を砕かれる。反撃する力を失った弟を壁に押しつけ、喉を渾身の力で締め上げるグレガー。サンダーは左手で短剣を抜き、グレガーの腹に、肩に、首に突き刺すが、グレガーは痛がる様子すら見せない。呆れて笑い声を上げるサンダー。
その双眸に、グレガーの親指がめり込んでいく。サンダーは最後の力を振り絞り、短剣でグレガーの左目を突き刺した。剣は脳を貫き、後頭部から検先を覗かせている。顔をしかめて後退するグレガー。潰されずに済んだサンダーの右目はよろめく兄の姿をとらえた。
(やったのか・・・!?)
サンダーが希望を感じたのは一瞬だった。グレガーはその剣すらも引き抜こうとしている。
サンダーは咆哮を上げてグレガーに体当たりした。二人は崩れ落ちる寸前だった壁を突き破り、火の海に落ちていった。
「後退だ!門の外に出ろ!」
ドロゴンの炎がワイルド・ファイアの誘爆を引き起こしたのを見て、ジョン・スノウは剣を収め、退却命令を出す。
粉塵にまみれながらドラゴンの炎、ドスラク騎馬隊の無差別攻撃をかわして脱出をはかるアリアは、殺戮と続けるデナーリスに対して激しい怒りを覚える。
入江に抜ける出口はすべて崩れ落ちていた。
「私たちの子を生かせたい。死にたくない」
涙を流して懇願するサーセイの頬を手で包み、ジェイミーは「俺のことだけを見ていろ。他のことはどうでもいい」と語りかける。
ロバート王の暗殺を始め、王都で発生したすべての事件に関わり、この悲劇を招いた女王は、彼女を愛し続けてきたただ一人の男に抱かれながら生き埋めになった。
デナーリスの殺戮は終わった。
焼け落ちた町には灰が雪のように舞い落ちている。
我に返ったアリアは目の前に現れた白馬に跨がった。
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