王の道
右手首を切り落とされたジェイミー・ラニスターは、馬から落ちて泥まみれになり、水の代わりに馬の小便を飲まされるという屈辱を味わう。一瞬の隙を突いて傭兵の腰から剣を奪うが、左手一本では剣を支えることもできず、ブライエニー・タースの前で叩きのめされる。
野営地でブライエニーは、何も食べようとしないジェイミーを「腕をなくしたくらいでなんだ、女のような奴だ」と叱責、ジェイミーが左手でパンをかじり始めると「なぜ助けた?」と訊く。タース島は海の碧さからサファイヤと呼ばれるが、宝石がとれるわけではない。そのことをジェイミーは知っていたはずだった。
キングズ・ランディング
ティリオンはヴァリスを訪ね、ブラックウォーター湾の戦いでサーセイが私を亡き者に使用とした証拠をつかみたいと相談する。
ヴァリスは自分の身の上について照らしあわせながら、妖術や黒魔術を憎む理由を話す。そして「真実を知りたければ影響力を持つことです」と言い、大きな箱の蓋を開ける。
そのなかには、老いた男が鎮座していた。ミアで去勢した時、ヴァリスにこの上ない苦しみを味会わせた妖術師だ。
それを見せたあと、ヴァリスは言った。
「やり遂げる覚悟さえあれば、あなたの復讐もきっと叶うはずです」
ベイリッシュに仕えながらヴァリスの”小鳥”として動いているロスは、娼婦たちがポドリックの性戯にメロメロになっているが、高巣城(アイリー)に赴く準備で忙しいベイリッシュはそのことに気付いていないと話す。そして船の積み荷のなかに羽毛のマットレスが2つあると報告。どうやらベイリッシュは、この機を利用して大事な人物を連れ出すつもりらしい。
ジョフリーとサーセイは、マージェリーとレディ・オレナを挙式会場となる大聖堂に案内する。サーセイとオレナが話をする間、ジョフリーはマージェリーに”狂王(マッドキング)”が眠る棺桶を見せる。怖がるどころか「この聖堂を作った彼らの遺体を焼いて棄てなかったのは何よりでした。偉大な者には試練がつきものです」と語るマージェリーに、ジョフリーは共感する。
その時、聖堂の外から民衆の歓声が聞こえてきた。ジョフリーは警戒するが「愛を与えれば民衆は1000倍にして返してくれます。先頭に立って王都を守った陛下は、みんなに愛されています」とマージェリーに言われ、扉を開けるよう命じる。
マージェリーに手を取られ、民衆の前に歩み出すジョフリー。マージェリーに促されるまま、民衆の声に応えて笑顔で手を振る息子の姿を見て、サーセイは危機感を募らせる。
どんな手を使ってでも必ずジェイミーを取り返す――タイウィンの言葉を聞いた上でサーセイは言う。
「ラニスターの遺産を守れるのはジェイミーでもティリオンでもなく、私よ」
タイウィンは「ならばそれを証明してみせろ」と突き放す。
サーセイは話を変えて続ける。
「タイレル家は危険よ。マージェリーはジョフリーの操り方を知っている」
「ならばおまえも方法を学べ。私がおまえを信用しないのは、女だからではなく賢くないからだ。だからおまえの息子は、皆を踏みつけにする人間になってしまった」
話は終わりだ、と告げたつもりで新たなペーパーをつかんだタイウィンに、サーセイは静かに言った。
「それなら――父上があの子を止めてみせて」
「そうするさ」
タイウィンは静かに言った。
ロブ・スタークが倒れると、サンサ・スタークが北部を掌握するためのカギになる。その鍵をベイリッシュが持ち去ることを良しとしないヴァリスは、『メイゴルの天守』にレディ・オレナを訪ねて解決の道を探る。
マージェリーはサンサに会い、親友になってほしいと頼み、ハイガーデンの舞踏会を見に来てほしいと話す。サンサが「行きたいけど太后が許してくれない」と言えば、「結婚したら私が王妃よ」とマージェリーは意に介さない。
そして、ロラスがレンリーと恋仲であったことは忘れてこう言った。
「あなたがロラスと結婚したら――私たちは姉妹になるわ。うれしい?」
サンサは笑みを浮かべて何度も頷いた。
クラスターの砦
ジルは穴堀りの作業をサボって会いに来たサムウェル・ターリーに、いつかもらった指ぬきを返し「
この子の命を守れないのならもう来ないで!」と言って追い返す。
足の怪我が元で死亡したバレンを火葬する間、ラストは「あの野人のくそ野郎が食い物を寄越さないから死んだ・・・!」と恨み言をも漏らす。娘たちを守るためとはいえ、空腹を抱えた偵察隊に対する扱いのひどさに多くの者が耐えかねていた。
クラスターはそんな彼らの前で骨付き肉に食らいつきながら「もう怪我は治っているんだろ?早く出ていけ。死にかけているような奴は喉を切ってやればいい。その度胸がないなら置いていけ。おれが始末してやる」
その言葉に反応するラストたち。ジオー・モーモントが治めようとするが、クラスターは斧を握り、なおも言葉で冥夜の守人(ナイツ・ウオッチ)たちを攻撃する。すると、カールが言った。「自分の娘を犯す、野人のくそ野郎が・・・!」
カールをめがけて斧を振り下ろしたクラスターは剣で喉をつかれて絶命した。そして剣でカールを制する決断をしたモーモントの背後からラストが襲いかかった。剣で貫かれたモーモントは渾身の力でラストの喉を締め上げるが、口から血を吹き出して倒れた。ラストはその上に馬乗りになり、とどめをさした。
仲間割れによって修羅場と化したクラスターの砦。サムは一目散にジリのところへ行き、「ここから連れ出してほしい」という彼女の願いを叶えた。
北部の森~ドレッドフォート城
(※深林の小丘城<ディープウッドモット>は北部西端の海岸にあるので東へ逃げた第3話とつじつまが合いませんが・・・)シオン・グレイジョイを2度に渡って助けたラムジーは「姉上がおられる深林の小丘城(ディープウッドモット)はもうすぐです」と言って森のなかを進んでいく。
ラムジーは、ヤーラ・グレイジョイからシオンを助けてほしいと頼まれたので、奴らに仕えて助け出す機会を待っていたと言う。そして命がけで助けたのは、幼いころ、ベイロン公にとって最後の息子であるあなたを連れ去る船を崖の上から見ていたからだと説明した。
やがてラムジーは、用心深く城の地下入口へシオンを案内する。彼が鉄扉の鍵を開ける間、シオンは制圧したウィンターフェル城でスタークの息子たちをみつけることができなかったので身代わりに農場の孤児を殺害して吊したことを打ち明けた。父に認めてほしくてそうしたが、育ての父は首をはねられた。俺は道を過ってしまったとも。
鍵を開けたラムジーは、その先の部屋に入り、松明に火を灯す。そこに浮かび上がったのは、拷問用の張り付け台だった。
そして彼は言った。「こいつが仲間たちを殺した」
シオンはまたしても張り付け台に縛られた。
洞窟の丘(ホロウ・ヒル)
アリアたちが頭巾で目隠しされたまま連れてこられたのは、岩山の大きな洞窟を利用した旗印なき兄弟団(ブラザーフッド)の隠れ家だった。縄で縛られたままその中央に引っ張り出されたサンダー・クレゲインを迎えたのは、ベリック・ドンダリオン。このアウトロー集団のリーダーだ。
サンダーは、周りを囲んでいる者たちを見て「スタークやバラシオンの脱走兵どもの首領とは落ちぶれたものだ」と嘲笑するが、ベリックは「ジョフリーの犬だったおまえも逃げてきたのだろうが」と応酬。
そして、唯一神――『光の王』(ロード・オブ・ライト)と出会ってここにいる全員が生まれ変わったというベリックは、弱き者をくじいてきたサンダーに裁きを下すと宣告。
裁かれるのは、ママーズ・フォードで7歳の女児らを犯し、母親の前で赤子を殺した罪。そして、鉄の玉座の前にプリンス・エイゴンとプリンセス・レイニスを横たえた罪。
サンダーはどちらも俺の兄や他のクレゲイン家の者がやったことだと弁明し、ターガリエンの子など見たこともなければ触ったこともないと主張。
「それでも斬るというなら、さっさとやるがいい。だが、自分たちのことを棚に上げて俺を人殺しと呼ぶな」
「マイカーを殺した!」
叫んだのはアリアだった。
「平民の子を・・・・・12歳だった私の友達を。丸腰だったのに、獲物みたいに彼を追い込んで」
プリンス・ジョフリーの命令を遂行したまでだ、と開き直るサンダーにベリックは「殺人の罪だが、それを証明する術はない。だから『光の王』(ロード・オブ・ライト)がおまえを裁く」と言い、決闘裁判を宣告した。
そして、ソロスとアンガイ、アリアを挑発するサンダーに、ベリックは告げた。
「相手は俺だ」
旗印なき兄弟団(ブラザーフッド)誕生の背景
ところが、エダードはタイウィンの狙いに気付いていなかったジェイミー・ラニスターにキングズ・ランディングの街路で襲われ、瀕死の重傷を負ったために自ら西へ向かうことができず、ベリック・ドンダリオン、ソロスたち家臣にグレガー軍を叩くよう命じた。
その最初の戦場となったのがママーズフォードで、スターク軍は奇襲を受けて敗走。ベリックは重傷を負った。2週間後、ベリックは騎乗できるまでに回復したが、戦死者は増えるばかり。待てど暮らせど王都からの援軍は来ず、河川地帯は圧倒的な兵力を誇るグレガー軍に占拠された。
そして、ロバート王が逝去し、エダードが謀反の罪で斬首されると、彼らは反乱軍を抑える官軍から、ジョフリー王に刃向かう逆徒となった。そこで降伏するという選択肢もあったが、ベリックは言った。「命ある限り、王の臣民ために戦おうではないか」と。
その後、行き場を失った騎士や従士だけではなく、農夫や平民、司祭でさえも『光の王』(ロード・オブ・ライト)のもとに集い、臣民のために戦うアウトロー集団となった。
アリアがハレンの巨城(ハレンホール)にいた時、グレガーらタイウィン軍の騎士たちが北部人を拷問して旗印なき兄弟団(ブラザーフッド)の情報を集めていたのは、こういう背景があったからです。
アスタポア
デナーリスは8,000人の”穢れなき軍団(アンサリード)”が整列した広場で3頭のドラゴンのうちの一頭、黒竜のドロゴンを鎖に繋いだまま飛ばせて見せ、奴隷商人のクラズニス・モ・ナクロツに渡し、代わりにムチを受け取った。
クラズニスは上機嫌で言う。
「このあたりには略奪にうってつけの小さな町がいくつもあるから、まだ未熟な彼らを流血に慣れさせろ。そして健康で体力のある捕虜を連れてくれば、いい値段で買い取ってやる。そいつらが次代の”穢れなき軍団(アンサリード)”の一員になっているかもしれないぞ」
上空で泣き叫ぶドロゴンに背を向けて、デナーリスは穢れなき軍団(アンサリード)”を前に動かした後、ドロゴンを制御できずにいるクラズニスにヴァリリア語で言った。「ドラゴンは奴隷ではない」
これまで侮辱の道具として使っていたヴァリリア語が、デナーリスの母国語であると知って呆然とするクラズニス。
デナーリスは再び”穢れなき軍団(アンサリード)”に命じた。
「親方たちを殺せ!ムチを持つ者は皆殺しだ!子どもは襲うな。奴隷を解放せよ!」
忠実に命令に従う”穢れなき軍団(アンサリード)”を見て、クラズニスは叫ぶ。
「俺が主人だ!奴を殺せ!」
しかしその声は誰にも届かない。
デナーリスはクラズニスの頭上にいる我が子の名を呼ぶ。
「ドロゴン!」
次の瞬間、クラズニスは全身を炎に包まれて転げ回った。
自由を得て広場を焼き尽くそうとするドロゴン。アスタポアの自由民たちは逃げ惑い、奴隷商人たちは慈悲を乞いながら続々と倒れていく。
黒煙と血の臭いが立ちこめる広場で白馬に跨がり、デナーリスは宣告した。
「おまえたちは今日から自由だ。去りたい者は去れ。決して罰したりしない。約束する。だから自由民として私とともに戦ってくれるか?」
誰かが槍の柄を地面に突き刺し始めた。その音はやがて地鳴りとなって広場を覆った。
目の前の敵だけを殺す騎士、ウエスタロスの王となるための力を手に入れた瞬間だった。デナーリスはムチを棄て、北へと進軍を開始した。
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