キングズ・ランディング
クァイバーンから死の軍団が”壁”を越えたと聞いたサーセイは、顔色ひとつ変えず「それは良かった」と答えた。
しかし、ユーロン・グレイジョイが連れてきた『黄金兵団』(ゴールドカンパニー)が見込みより大幅に少ない2万人で、ゾウはいないと聞くと失望した。そして裏切りをちらつかせるユーロンの心を留めるため、ベッドをともにした。
キングズ・ランディングに留まって女を抱いていたブロンは、死の軍団と戦ってジェイミーとティリオンが生き残ることがあれば始末せよ、とクァイバーンから密命を受ける。
ドラゴンストーンを発ったシオン・グレイジョイは、闇に紛れてブラックウォーター湾の沖に停泊していた鉄(くろがね)水軍の船に潜入し、ヤーラを救出する。
ヤーラはユーロンがキングズ・ランディングに留まっている今なら鉄(くろがね)諸島を奪還できるし、デナーリスたちが死の軍団に敗れた場合、戻ってくる場所が必要だと諭すが、シオンは北へ行くと決めていた。ヤーラもその決意を察知していて、ようやく本物の”男”になった弟を抱きしめて言った。
「やつらをぶっ殺せ」
ウィンターフェル
デナーリス・ターガリエン、”穢れなき軍団(アンサリード)”、ドスラクの騎馬隊、2頭のドラゴンとともにウィンターフェルへ戻ってきたジョン・スノウを群衆に交じって迎えたアリア・スタークは、一行のなかにサンダー・クレゲインとジェンドリーの姿を見つけて笑みを浮かべる。
ジョンは再会したブラン・スタークと抱擁した後、サンサとデナーリスを引き合わせた。
「北部は聞いていたとおり美しい。あなたのように」
デナーリスの褒め言葉をサンサはさらりと受け流し、彼女たちの関係にはまったく興味がないブランは「時間がない」と言い、ヴィセーリオンが夜の王(ナイトキング)に亡者(ワイト)にされ、死の軍団が壁を破壊して南進していることを不躾に告げた。
それを受けてサンサは”壁”に近い城にいる諸侯たちにウインターフェルまで引くように命じたが、最後の炉端城(ラスト・ハース)のアンバー子公は”3人の陛下”を前に戸惑いながら、馬と馬車がもっと必要です、と述べた。サンサは可能な限り与えると答え、ただちに最後の炉端城(ラスト・ハース)へ戻り、ここまで民を連れてくるように伝えた。
城主と女王に挟まれた格好で、王ではなくなった者が座っている。その不自然な状況に異を唱えたのは、熊の島(ベア・アイランド)の幼き女公・リアナ・モーモントだった。リアナは北の王がウインターフェルを離れ、デナーリスと同盟を組んだことが許せないようで「あなたはもう何者でもない」と吐き捨てた。
ジョンはあっさりとそれを認め、北の王に選んでもらったことに対する感謝を述べた上で現状を説明した。
「同盟が必要だと、ここを離れる前に伝えたはずだ。我々と共に戦う同盟者たちをここに連れてきたのです。王であり続けるか、北部を守るか。私には選択肢があった。そして北部を守ることを選んだ」
ざわつく諸侯たちを鎮めようとティリオンが立ち上がる。そして、ジョンの英断があったからこそ、最強の戦力がここに集まった、共に戦うべきだと力説した。しかし諸侯たちはラニスター軍の参戦には不快感を示し、本来、理解者であるはずのサンサもそれに便乗する形でティリオンに問う。
「最強の軍団とともに冬を越す用意をしていない。どうやって養うの?そもそもドラゴンは何を食べる?」
「なんだって食べるわよ」
答えたのはデナーリスだった。
(――死の軍団を見てもそんな呑気なことを言っていられるのかしら?)
散会後、中庭で指示を飛ばしてドラゴングラスを集めるジェンドリーの姿を眺めていたティリオンは、かつての妻――サンサと2人で話す。サンサはかつての夫であり同盟者であるデナーリスの女王の手を「おまえ」と呼び(翻訳の方針が変わったのかな?違和感あるわ……)、共に戦うと約束したサーセイを信じているティリオンに言った。
「昔は、おまえが最も巧妙な男だと思っていた」
ウィアウッドの森でアリアと再会し抱擁を交わしたジョンは「サンサが厄介だ。彼女は自分が一番賢いと思っている」と冗談半分、本気半分で嘆く。
アリアは賢いサンサと家族を守るのが自分の仕事だと告げ、ジョンにも「家族だということを忘れないで」と話す。
カースターク家の兵と民が続々と到着するのを見届けながら、ダヴォス・シーワースは、ティリオンとヴァリスに北部の諸侯と民がデナーリスを理解しようとしない現状を嘆き、策を講じる必要があると話す。
ダヴォスはジョンとデナーリスが結婚すれば国は治まると考えていたが、ヴァリスは「さみしい年寄りの言うことなど聞いてはくれんだろう」と悲観。聡明な若者たちがそうするのは、命も恋もいつかは燃え尽きるという不快な現実から目をそらすためでもあると意味深なことを言う。
デナーリスは女王に敬意を示そうとしないサンサが気に入らない。ジョンもそれが分かっていながらどうにもできないもどかしさを感じている。
デナーリスは2頭のドラゴンの食欲が北部に来てから落ちていることを心配しつつも、ジョンをその背に促し、大空へ羽ばたく。ジョンは振り落とされないようにレイガルの背にしがみつき、ランデブー飛行を成功させる。そして巨大な滝の前に降り立つと、ドラゴンたちが見ている前でデナーリスを抱きしめ、キスを交わした。
ジェンドリーが仕切っている鍛冶工房を訪ねたアリアは、サンダー・クレゲインと再会。ひと目見て逞しくなったと感じたサンダーは「冷酷なアバズレめ」と憎まれ口を聞くが、その目は今までになく穏やかで、生きて会えたことが嬉しくてたまらないようだ。
その後、アリアはジェンドリーと再会を喜び合い、特殊な武器の図柄を渡す。
サンサのもとに届いた文書はグラヴァー公からで、彼は軍と共に深林の小丘城(ディープ・ウッド・モット)に留まると知らせてきた。ジョンにすれば裏切りに値したが、サンサにしてみれば北の王がいなくなったのだからあり得る話で、ひと言の知らせもなしに王位を捨てたとジョンを責めた。
ジョンは、この戦いには王位など関係ない。北部を守りたかっただけだ。デナーリスの軍がなければ勝つことはできないんだ、と再度説明するが、サンサはその決意と覚悟を認めようとはしない。そしてジョンに聞いた。
「忠誠を誓ったのは北部のため?それとも彼女を愛しているから?」
知識の城(シタデル)でジョラー・モーモントの命を救った礼を言うためサムウェル・ターリーに会ったデナーリスは、そこで初めて彼がランディル・ターリーの息子だと知る。そして兄とともに河間平野(リーチ)で処刑した事実を明かす。
残酷な現実に打ちひしがれるサムに、ブランはジョンの出生の秘密を話すよう促す。
そしてサムは地下墓所にジョンを訪ね、デナーリスが父と弟を処刑したことを話す。そしてその事実を知らず「すまなかった」と謝るジョンに、サムは出生の秘密を話す。
「君の母はリアナ・スターク。本当の父親はレイガー・ターガリエン。はなから落とし子ではなかった。君は鉄の玉座の真の後継者、エイゴン・ターガリエンなんだ」
ジョンは信じられない思いでサムに問う。
「父は今まで出会った中で最も高潔な人だ。その父が嘘をついていたというのか?」
「そうじゃない。君の父ネッド・スタークは、君の母親を守ると誓った。彼が誓いを破っていたら、君はロバート・バラシオンに殺されていたんだ。君が真の王なんだ。エイゴン・ターガリエン。6代目、王国の守護者だ」
「……」
ジョンはどうにかその場に踏みとどまり、やっとの思いで言葉を発した。
「―――女王は、デナーリスだ」
「本当は違う」
「反逆だ」
「それが事実だ。君は王位を捨ててまで人々を救った。彼女はどうだ?」
翌朝、1人の騎士がウィンターフェル城にたどり着いた。ジェイミー・ラニスターだ。城内を見渡す彼の目は、車椅子姿の少年に釘付けになった。彼は、あの日――ジェイミーが塔から突き落とした少年に違いなかった。
最後の炉端城(ラスト・ハース)
東の物見城(イーストウォッチ)で難を逃れ、最後の炉端城(ラスト・ハース)にたどり着いたトアマンドとベリック・ドンダリオンは、城内の惨状を見て息を呑む。やがて彼らは彼らは黒の城(カースル・ブラック)から馬を飛ばして来たエディソンと合流。
そして警戒を強めながら奥へと進んだ彼らが見たものは……巨大な杭で壁に貼り付けにされたアンバー公の姿だった。その周囲は誰のものか分からない手足で模様が描かれている。
「夜の王(ナイトキング)のメッセージだ……」
ベリックは亡者(ワイト)と化したアンバー公を焼き払い、断末魔の叫びを聞いた。
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