ツイン・ピークス
ローレンス・ジャコビーを崇拝し黄金のシャベルを手に入れたネイディーン・ハリーは、夫のエド・ハーリーが経営するガソリンスタンドまで歩き、これまでの身勝手な振る舞いを詫びる。
「あなたとノーマが相思相愛と知りながら、嫉妬してあなたたちを引き離してきた。しかもあなたを操って。人が善いあなたは愛を捨てて私に従ったけど、もういいの。あなたはもう自由よ。私はこのシャベルでクソから抜け出すわ」
エドに別れを告げたネイディーンは、笑顔で背中を向け、歩き出す。
エドは急いでノーマ・ジェニングスのもとへ向かう。自由になったと報告するためだ。しかし『RR(ダブルアール)ダイナー』には店をFC展開するウォルター・レイフォードが来ていた。奥のボックス席で親しげに話す2人を見て、エドはいいようのない孤独感にとらわれる。
ノーマは家族と過ごす時間を増やすため、本店の経営に専念したいからFC権を買い取ってほしいとウォルターに頼む。ウォルターは「大きな間違いだ。きっと後悔する」と言い残して店を出て行った。それを見届けからノーマは、カウンター席で目を閉じているエドの背中にそっと触れた。
「結婚してくれ」とエド。
ノーマは肩に手を回し、唇を重ねてから返事をした。
「もちろんよ」
モンタナ
闇のなかをひとり、車で走り続ける”ミスターC”の前に、コンビニエンスストアとウッズマンが現れる。”ミスターC”は車を降り、ウッズマンの後に続いて外階段をのぼった。
その先は壁と天井にバラが描かれた部屋だった。座っていたウッズマンは”ミスターC”を見上げ、機械のレバーを下ろした。閃光が走り、”ジャンピング・マン”の姿がフラッシュバックする。

ウッズマンやトレモンド婦人とその孫、”別の場所から来た男”らとともにコンビニエンスストアの2階での集会に参加していました。
閃光が消え、扉から別のウッズマンが現れると、座っているウッズマンは壁に立てかけてあった杖を持ち、床を突いた。”ミスターC”はウッズマンに続いて扉のない入口から奥へ進む。長い廊下の向こうに階段が見える。
その階段をのぼり、ちいさな部屋を抜けると広い場所へ出た。正面にいくつもの扉が並んでいる。古いモーテルのようだ。そこにも別のウッズマンがいて、”ミスターC”を先導する。
”ミスターC”は一番左の扉へ向かう。そこだけ照明が点いている。ルーナンバーは”8”だ。しかし鍵がかかっている。ガウンを着た女性が裾を引きずるようにゆっくりと歩いてきて言った。
「わたしがドアの鍵を開けてあげる」

部屋に入る。天井の蛍光灯が点滅している。やがて正面の壁がカーテンになり、開かれた。そこにはいびつな円柱型の物体があり、やかんの注ぎ口に似たところから円形の蒸気のようなものを発している。
「……君か」
物体が言葉を発する。
「ジェフリーズ。レイに俺を殺せと命じたな」
「何?レイに電話はした」
「つまり、命じたんだろ」
「……」
「5日前、俺に電話したか」
「……お前の番号を知らない」
「――じゃあ、あれは別の誰かか」
「昔はよく話した」
「ああ、そうだった。1989年だ。お前はFBIのフィラデルフィア支部に現れ、ジュディに会ったと言った」
「――つまり、お前はクーパーか」
「――フィリップ。なぜジュディの話をしないと言った?ジュディとは誰だ?ジュディは俺に何か用があるのか」
「直接ジュディに聞いたらどうだ?俺からお前に教えよう」
フィリップはやかんの注ぎ口に似たところから数字を吐き出す。4,8,5,5,1,4……。”ミスターC”はメモを取る。
メモを懐にしまって”ミスターC”はもう一度聞く。
「ジュディとは誰だ?」
「お前はもう、ジュディに会っている」
「どういう意味だ」
フィリップは答えず、黒電話が鳴った。
「ジュディは何者なんだ!?」
フィリップは消えた。”ミスターC”が受話器を掴むと閃光が走った。
次の瞬間”ミスターC”はコンビニの公衆電話を握っていた。すでに切れている。
”ミスターC”が受話器を置いて車に向かうと、若い男が拳銃を向けていた。リチャード・ホーンだ。
リチャードはクーパーがFBI捜査官だと知っていた。母親が黒いスーツ姿のクーパーの写真を持っていたからだ。
”ミスターC”は彼の母親がオードリー・ホーンと聞くと一瞬の隙を突いてリチャードを殴り倒し、拳銃を奪った。そして車に乗れと命じた。
車に乗り込む直前、”ミスターC”はスマホでメッセージを送った。
『”ラスベガス”は?』
車が発進すると店内に閃光が走り、コンビニエンスストアは消えた。

ツイン・ピークス
スティーブン・バーネットは、コカイン中毒で錯乱してベッキーを殺したと思い込んでいるらしく、ガーステン・ヘイワードとともに森の奥へ逃げ、太い幹にもたれかかって拳銃を握る。ガーステンはどうにかなだめようとするが、そこにいるのを犬の散歩に来たトレーラーハウスの住人に目撃される。慌ててスティーブンから離れたガーステンは、背中で銃声を聞く。
トレーラーハウスの住人は、管理人のカール・ロッドに見たことを伝える。
仕事仲間のフレディ・サイクスとロードハウスに出かけたジェームズ・ハーリーは、ボックス席で飲んでいたレネーに声をかける。
ジェームズは軽い挨拶のつもりだったが、夫のチャックは「ひとの女房に話かけんな!」と激怒。ジェームズの胸ぐらをつかんで殴り倒した。連れの男も加勢し、フロアに転がったジェームズを蹴り続ける。
「やめろ」
止めたのはフレディだった。園芸用手袋をはめた右手でフレディは騒ぎを収めた。ジェームズはフロアに横たわる2人を見て救急車と呼んでほしいと頼み、口から泡を吹き白目を剥いているチャックを介抱するレネーに詫びた。
フレディとジェームズは傷害罪で保安官事務所に収監された。フレディは8号室。7号室に入ったジェームズの目の前にはナイドがいた。ガウンを着た彼女は何かを探るように手の平を動かし、声にならない声をあげている。それを真似て、頬に穴が空き口から唾液と血を垂れ流している男が声を上げる。「黙れ!」チャドが叫ぶ。
ネヴァダ
トニーを探せとロジャーに命じた直後、ダンカン・トッドは波乱に満ちた生涯を終えた。シャンタルに頭を撃ち抜かれたのだ。胸を撃たれたロジャーはまだ息があったが、うめき声を聞いて引き返してきた殺し屋にトドメをさされた。
帰宅したクーパーはチョコケーキを食べながら、幼い子どものようにテレビのリモコンを触る。そのうちにテレビは古い映画を映し出す。登場人物は言う。
「ゴードン・コールに言え」
クーパーの目は、画面に釘付けになった。

そしてクーパーはフォークを握りしめたまま床を這い、コンセントに近づいてゆく。フォークの持ち手側をさしこむクーパー。次の瞬間、ジェイニー・Eの絶叫が響き渡った。
ツイン・ピークス
夜半。マーガレット・ランターマンはホークに電話をかけ、間もなく命の灯が尽きることを知らせる。
「あなたは死を知っているわね。変わるだけよ。終わりじゃない」
「……」
「ホーク。時が来たわ。少し怖い。手放すのが怖い。私の話を覚えている?これ以上、電話では言えない。意味は分かるわよね。あなたと顔を合わせて話したことよ。”あれ”に注意して。ブルーパイン山にかかる月の下にある”あれ”よ」
「……」
「ホーク。丸太が黄金に変わった。風がうめいている。私は死ぬ。おやすみ、ホーク」
「――おやすみ、マーガレット」
ホークは電話を切って呟いた。
「さよなら、マーガレット」
ホークは会議室に仲間を集め、マーガレットが亡くなったと告げた。

ホークは第11章でこれについてシェリフ・”フランク”・トゥルーマンに訊かれ「知らない方がいい。けっして」と答えています。
オードリー・ホーンとチャーリーは、ビリーを探すためロードハウスへ向かおうとするが、チャーリーがコートを着ろと言ったため玄関先で口論になる。
「ビリーならそんなことは言わない」とオードリー。
「ならば私はコートを脱ぎ、今夜は外出しない」とチャーリー。
不毛な議論は続く……。

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