異空間
ニューヨークシティの高層ビルのガラスボックスから飛び出したクーパーは、見知らぬ建物に到着する。凪いでいる海に面した扉から中に入ると、暖炉の前に瞼を縫い付けられた女性ーナイド(内道)が座っていた。どうやら言葉が話せないらしい。
何者かが扉が激しく叩いている。危険を察知したのか、ナイドはアクションで(物音を立てないで)と伝えるが、クーパーはナイドの背後の壁に埋め込まれているコンセントが気になって仕方がない。金属プレートに ”15″が刻印してある。
クーパーは立ち上がり、コンセントに接近する。見えない衝撃がクーパーを襲う。ナイドは慌ててクーパーの前に立ちはだかり(危険。とても危険)と伝える。そうしている間にも扉を叩く音は激しさを増している。
覚悟を決めたのか、ナイドは壁伝いに歩き、手招きしながらクーパーと別の部屋へと導く。鉄の梯子を登ると、そこは宇宙のような空間だった。畳一畳ほどのスペースにいびつな円柱状の装置がある。ナイドはクーパーに懸命に何かを伝えようとし、装置の特面に取り付けられたレバーを引いた。
次の瞬間、ナイドは電流が流れたかのように全身を震わせかと思うと、はじかれたように転落した。どこまでも続く闇に転落していくナイドをクーパーは呆然と見送る。ナイドは戻って来ない。途方にくれるクーパー。やがて、その足元によく知っている人物の顔が流れてきた。ガーランド・ブリッグス少佐だ。
「青いバラ」
それだけ言って少佐は消えた。
クーパーは仕方なく梯子を降りてもとの場所――暖炉のある部屋に戻る。扉を叩く音は聞こえない。ナイドに止められたコンセントに目をやると、プレートの数字が”3″に変わっていた。そして暖炉の前のソファには赤いシャツの女性が座っていた。
女性は振り向いてクーパーの姿を確かめてから、腕時計を見た。2:53を示したところだ。コンセントから、じりじりという音が聞こえてくる。
コンセントに接近し、ビリビリとした衝撃を受けるクーパー。女性は立ち上がり、クーパーに伝える。
「あなたがそこに着く時には、あなたはもう、すでにそこにいるだろう」
再び扉を叩く音が聞こえてきた。激しさを増している。
「早く!急いだほうがいい。私のママが来る」女性が促す。
クーパーは頭から煙を出しながら”3″のコンセントに吸い込まれていった。
サウスダコタ
同時刻。車で移動する”ミスターC”に異変が起きていた。激しい目眩いに襲われて身体がいうことを聞かず、ハンドルをきるのもおぼつかない。シガーソケットがジリジリという異音を発し続けている。
やがて車は山肌に乗り上げて横転。”ミスターC”は口からなにかを吐き出しそうになるのを懸命にこらえるが、フロントガラスの前に赤い部屋が・・・。
ネヴァダ
デイル・クーパーと同じ顔を持つダグラス・”ダギー”・ジョーンズは、密会用の一件家でグラマラスな娼婦との楽しい時間を終えようとしていた。表情が冴えないのは左腕がしびれているせいだ。薬指には翡翠の指輪をしている。
娼婦がシャワー室に入った後、床に倒れ込み、嘔吐するダギー。ジリジリと音を発するコンセント。次の瞬間、彼の巨体は浮き上がり、後方に引っ張り込まれた。
サウスダコタ
”ミスターC”の目の前に、ダギーが現れる。赤い部屋のソファに座っている。”ミスターC”は激しく嘔吐し、意識を失った。
赤い部屋
自分の身に起きたことを理解できないでいるダギーに、マイクは教える。
「何者かがこしらえたんだ・・・君を。ある目的があって・・・だが、おそらく今、その目的は達成された」
「そうなのか?」
答えたダギーの左腕が縮み、翡翠の指輪がフロアに転がる。そしてダギーの身体は消滅し、金色に輝くちいさな玉になった。マイクはテーブルに指輪を置いた。
ネヴァダ
コンセントから出現し、ダギーの吐瀉物に寄り添うように停止したクーパー。シャワー終えて戻ってきた娼婦はスーツを身につけ、髪型も変わっていることに驚くが、深く詮索することはなく、早くここを出ようと促す。
クーパーは記憶がないらしく、行動が遅く、言葉もスムーズに出てこない。娼婦は苛つきながらもクーパーを車に乗せて住宅を離れる。
移動中、クーパーはダギーを知る何者かにスナイパーライフルで狙われるが、ポケットから落ちたグレート・ノーザン・ホテル315号室のキーを探して頭を下げたため難を逃れる。ダギーの狙撃に失敗した男は、住宅前に置いてあるダギーの車に爆弾を仕掛ける。
その様子を、道を隔てた住宅で暮らす少年が目撃していた。「119・・・119」母親らしき女は意味不明の言葉を発し、酒でクスリを飲む。
サウスダコタ
”ミスターC”の車が横転した現場に、2名の警察官が到着した。車内をのぞき込んだ警官は呼吸困難を起こしてその場にひざまずく。
ツイン・ピークス
ローレンス・ジャコビーは、購入したスコップにゴールドの塗料を吹き付けている。足で操作できる自作のゴンドラに吊し、まんべんなく。黙々と。
保安官事務所では、デイル・クーパー捜査官に関する資料をテーブルに並べ、アンディとルーシー、ホークが不毛な議論を始める。先住民とルーシーがつまみ食いしたチョコレート・バニーの関係はいまのところ分からない。
ネヴァダ
シルバー・ムスタング・カジノで車から降ろされたクーパーは、娼婦に言われたとおり、5ドルを見せて助けを求めようとする。しかし、どういうわけかコインを購入。”赤い部屋の炎”に導かれるままにスロットマシンを選び、コイン一枚で大当たりを連発。みずぼらしい姿の老婆も、クーパーが指さしたマシンを選び、歓喜する。
ペンシルバニア
FBI本部。
「分かったのは2人の身元(サムとトレーシー)だけで、部屋の所有者は不明、警備員は行方不明。NY市警はお手上げ状態です」
捜査官のタミー・プレストンはニューヨーク・シティの事件について、副支部長のゴードン・コールとアルバート・ローゼンフィールドにそう報告する。
数百枚にのぼるガラスボックスのデジタル画像を押収したものの、時々、ぼやけた何かが映っているだけ。事件の夜に映っていた灰色の影のようなものも何者かは分からず、指紋やDNAも残っていない。ゴードンとアルバートは眉根を寄せて顔を見合わせることしかできない。
その矢先、デイル・クーパーに関する情報が電話で届く。コールは明日の夜明け、サウスダコタのブラックヒルズに向かうと告げた。
ツイン・ピークス
『Bang Bang Bar』では、THE Castus Blossomsが『Mississippi』を演奏している。
コメント
こんにちは。初めまして。
なぜゲロまで検証せねばならんのか。
笑いました。以前WOWOWでデビッド・リンチのメジャーデビュー前の映像特集をやっていて
見ましたが・・・自分は何を見せられているのだろう・・・と思いました。
まだリミテッドシリーズの途中までしか見てませんがこの解説は好きです。
コメントありがとうございます。
カイル・マクラクラン主演でNetflix配信の作品を
つくるという話を聞いてからまったく音沙汰がありません。
あと一作でいいのでデビッド・リンチの作品が見たいです。
では引き続きお楽しみください。
返信ありがとうございます。
長年の疑問がありまして・・・ツインピークスのFBI捜査官は、デビッド・リンチがヒドゥンを観て、俺のほうがうまく使えると思って決めたように見えるのですが・・・