赤い部屋
赤い部屋に戻ったクーパーのドッペルゲンガー・”ミスターC”は燃えて消失。マイクはクーパーから預かった髪の毛とタネを使い、新たなドッペルゲンガーを作った。
彼は約束どおり、ダグラス・ジョーンズとしてランスロットコートの赤いドアの家に住む愛する家族――ジェイニー・Eとサニー・ジム・ジョーンズのもとへ戻った。
1989年2月23日のローラ・パーマーを自宅に送り届けることができなかったデイル・クーパーは、赤い部屋に戻る。
「これは未来か…それともこれは過去か?」
マイクはそう言った後、その場から消える。しかしローラは現れない。過去が変わったためだ。
クーパーはマイクに案内されて”進化した腕”と対面した。”進化した腕”はクーパーに確認する。
「それは通り沿いの家に住んでいた少女の、あの少女の物語なのか?……そうなのか?」
クーパーはローラによく似た女のささやきを耳もとで聞いた後、リーランド・パーマーと対面。リーランドは言った。「ローラを見つけろ」
自力でロッジを出たクーパーはシカモアの木の向こうに立つダイアン・エヴァンスと再会した。
不明
クーパーはダイアンを車に乗せ、鉄塔と電線が続く直線を走る。
「本当にこれでいいの?そうしてしまったら、この先どうなるか……」
「わかっている。ちょうどその地点に来た。そう感じるんだ」
クーパーはツイン・ピークスから430マイル(692km)の地点で車を停めた。
車から降り、あたりを確かめたクーパーは、車に戻ってダイアンに言った。
「ここで間違いない」
「……」
「キスしてくれ。ここを越えればすべてが変わるはずだ」
二人は唇を重ねる。そしてダイアンは決意をこめて言った。
「行きましょう」
クーパーはゆっくりと車を走らせる。閃光が走った。
二人は車ごと時空を超えた。
オデッサ
そこは夜だった。
クーパーは黙って車を走らせ、やがてどこかのモーテルに車を停めた。
管理人室へ入っていくクーパー。その姿を目で追っていたダイアンは、入口付近でこちらを見ているもう一人の自分がいることに気づいた。二人は7号室に入り、ベッドの上で気が済むまで体を重ねた。
翌朝、クーパーが目覚めるとダイアンの姿はなかった。
クーパーはベッドの脇に置かれたメモを見つけ、手に取った。
そこにはこう書かれていた。
『リチャードへ。読む頃にはわたしはいない。どうか捜さないで。わたしはもう、あなたが分からない。この関係がなんだったにせよ、もうおしまい。リンダ』
「リチャード…リンダ…」
どこかで聞いた憶えがあるとクーパーは思った。
クーパーはスーツを着て表に出た。建物。部屋番号。車。すべてが昨夜とはまるで違っている。そこはテキサス州のオデッサだった。
クーパーは通り沿いにあった”ジュディのコーヒーショップ”に入る。そして若いウエイトレスにしつこく言い寄る3人組の男をあっさりと黙らせ、彼らの拳銃をフライヤーに沈めた。そして3日前から休んでいるという、もうひとりのウエイトレスの住所を書いたメモを受け取り、店を出て行った。
クーパーは目的の場所に到着した。平屋建ての住宅。庭が荒れている。玄関ドアに”1516”の文字があり、電線はナンバー”6”の電柱と繋がっている。クーパーは車を降り、玄関のドアを叩いた。
FBIだと名乗ると、住人は勢いよくドアを開けて訊いた。
「あの人が見つかったの?」
25年後のローラ・パーマーの顔がそこにあった。
「ローラ……」
クーパーは思わず声を漏らす。
「見つかったんじゃないの?」
「ローラ…!」
クーパーがにじり寄ると女性は後ずさり、人違いだと言った。
キャリー・ペイジ。それがその女性の名前だった。クーパーは「君はローラ・パーマーで、父親はリーランド、母親はセーラだ」と説明し「君を母親の家に連れていきたい」と言った。キャリー・ペイジは納得しなかったが、ここから逃れたい複雑な事情があるようで、ワシントン州のツイン・ピークスに行くことに同意した。
クーパーは彼女が支度をするのを待つため、家のなかに入る。リビングには男の死体があった。ソファに座った状態で額を撃ち抜かれたようだ。異常に膨らんだ腹部には裂けたような跡がある。
暖炉の上の壁には、青ざめた馬のミニチュアが飾ってある。絨毯の上にはライフルが無造作に置かれている。クーパーは男の死体について一切触れず、キャリー・ペイジとともに家を出た。
この家で何が起こったのかは、この状況をもとに視聴者が想像するしかないでしょう。最終章で新たな謎を提供して放置。それがツイン・ピークス。
ツイン・ピークス
二人は夜遅くにツイン・ピークスに着いた。すでに閉店している『RR(ダブルアール)ダイナー』の角を曲がる。キャリー・ペイジは、あたりの景色にも、通り沿いの白い家にも見覚えがないと言った。クーパーは彼女の手をとり、ローラ・パーマーが住んでいた家を訪ねた。
ノックに応じて扉を開けたのは見覚えのない金髪の女性だった。FBIのバッジを見せて名を名乗り「セーラ・パーマーはいますか?」と訊く。女性は怪訝な顔をして、そんな人はいない、セーラ・パーマーという人を知らない、と答えた。
クーパーはこの家は持ち家だという女性に誰から買ったかと訊いた。女性は夫らしき人物に確認して答える。
「チャルホント婦人です」
「……その人が誰から買ったのか分かりますか?」
女性は再度、奥の部屋にいる夫に確認して答えた。
「わからない」
クーパーは最後に訊いた。
「あなたの名前は?」
「アリスよ。アリス・トレモンド」
クーパーは夜遅くの訪問を詫びて背中を向けた。キャリー・ペイジと肩を並べ、車に向かって歩く。
『最期の7日間』では、FBI捜査官のチェスター・デズモンドが、彼女が借りていたトレーラーハウスの下でテレサ・バンクスがはめていた翡翠の指輪を拾い、行方不明になっています。
家を振り返り、よろめくようにクーパーは訊いた。
「今は何年だ?」
キャリー・ペイジが家を見上げると、どこからか女性の声が聞こえた。
「ローラ」
キャリー・ペイジは絶叫した。
(おわり)
その後のクーパーとローラ
”ジュディ”とは何だったのか?
エクスペリメントの正体は?
フレディ・サイクスのゴム手袋の意味は?
オードリーとチャーリーの不毛な議論は何だったのか?
……など、放置された謎の解明には触れていませんが、その後のデイル・クーパー、ローラ・パーマーについては、保安官事務所での一件後も報告書を作成するためにツイン・ピークスに残ったタミー・プレストンがツイン・ピークス ファイナル・ドキュメントのなかで少し触れています。爆発事故後から回復後のオードリー、ツイン・ピークスを去ったドナ・ヘイワードの25年、マーガレットがホークに残した手紙などストーリーを補完するレポートもありますので、最後までドラマをご覧になった方はぜひチェックを!
それから!デヴィッド・リンチとカイル・マクラクランはNetflixの新作ドラマを撮るようですね。楽しみしかありません!!
コメント
こんにちは。やっと観終わりました。WOWOWのを録画してなぜか見る気にならず、ふと思い出して観始めたら・・・終わるのが嫌でちょっとずつ観ていたのですが。ローラは見たくなかったなあ、の感想。最初に感激したのはルーシーでした。変わってない!デビッドリンチの部下の人、オン・ジ・エアーに出てたなあ、と調べたら亡くなっていました。バダラメンティも・・・
謎を残して放置、それがツインピークス、は名言だと思います。笑いました。このガイドのおかげで色々わかり感謝しています。ファイナルドキュメントの存在を知り購入しようと思ったら今は手に入らないようです。さてもう一度1stシーズンから見るか・・・見ていないリンチ作品見ようかなと考えています。
お役にたててよかったです。
リンチの新作を心待ちにしています。