ミーリーン
ティリオンは「私には軍とドラゴンがいる」というデナーリスに「殺戮と政治は違う」と話し、”王の手”として積んだ経験が必ず生きると持ちかけて相談役の座につく。その最初の役目はジョラー・モーモントの処遇を決めることだった。ティリオンは「戻ってきたら殺すといったはずよ」とジョラーに告げたデナーリスに「忠実な者を殺せば忠誠心は得られない。狭い海(ナロー・シー)を超えて統治者になるには、多くの忠誠心が必要です。しかし――彼をそばに置くことはできません」と言った。
「サー・ジョラーを追放して」
デナーリスが涙を浮かべて告げると、ジョラーは何も言わずにデナーリスに背を向け、謁見の間から出て行った。
結果的にティリオンという新たな参謀を、自分に代わる相談役を送り届けたジョラーは、ピラミッドを後にした。そして、闘技大会へむけて戦士を鍛えている親方のもとへ行く。
親方はおまえはもう自由だ、どこへでも行けと言うが、ジョラーは「俺が最強の戦士だ。自由よりも女王のために闘いたい」と申し出る。
灰鱗病(グレイ・スケール)が進行している彼がデナーリスのためにできることは、もう闘技場の戦士として闘うことだけなのだ。
相談役となったティリオンに、デナーリスは、ウエスタロスで車輪の輻(や:車輪の中心部から輪に向かって放射状に出ている棒)のように回り続けているラニスター、バラシオン、スターク、タイレルなどの関係を壊してみせると宣言する。
キングズ・ランディング
礼拝堂の暗黒房(ブラック・セル)に投獄されたサーセイは、罪の告白を拒否しているため水すらも与えられず、「トメンを呼んで」という願いも聞き届けられない。どれだけ叫んでも誰も助けに来てくれないという、過酷な現実に直面していた。
面会に来たクァイバーンは、パイセルの申し出を受けてやってきたケヴァン・ラニスターが王の手として小評議会を仕切っていること。ジェイミーとは連絡がとれないこと。トメンは妻と母が囚われの身となった心痛で食事も取らずに部屋に閉じこもっていること。そして、ここを出るには姦淫、大逆、近親相姦、ロバート王殺害の罪を認めて、雀聖下(ハイ・スパロー)に告白する以外にないと伝える。
しかしサーセイは「私があの男を取り立ててやったのよ!平民にひざまずき許しを請うたりしない」と言ってクァイバーンを睨みつける。
「研究を続けます」
クァイバーンは小声で言い残して去った。
ブレーヴォス
ジェクエン・フ=ガーに”数多の顔を持つ神”の僕(しもべ)として”別の者”になることを許されたアリアは、ラナという働き者の貝売りの少女となり、ラグマンの港にいる老いた男を見張る。この男は船乗りを相手にしている賭博師で、船が無事に目的地にたどり着けばこの男の勝ち。船長が自らの命を失えば船長の勝ちとなる。これほどの不条理なルールであっても船長がお金を賭けるのは、家族に大きなお金を残すことができるからだ。
しかし、賭けに負けた賭博師が支払いを拒んだとしたら、貧しい妻と子は数多の顔を持つ神にすがることになる。つまり、死という贈り物を与えるしかなくなる。そうなるのを防ぐために、ジェクエンはラナという少女になって賭博師を観察しろというのだ。そしてジャクエンは男への贈り物だと言って毒薬の入った小瓶をアリアに渡した。もうひとりの”娘”はまだ早すぎると反対するが、ジェクエンは「早すぎたとしても”数多の顔を持つ神”には同じことだ」と取り合わない。
ウィンターフェル城
監禁生活を強いられているサンサは、合図のことをラムジーに話したシオンを責める。シオンはラムジーか逃げることはできない。取り返しのつかないことになる前に助けたと話す。逃げようとした自分がすべてを剥ぎ取られ、こんな有様になっているだからと。
サンサはそんなシオンに「私だって家族をめちゃくちゃにしたあんたに、ラムジーと同じことをしてやりたいわ」と怒りを向ける。シオンはサンサに詫びるが「弟たちが死に、なぜあなたが生きているの!?」と詰め寄られ、今まで隠し続けていた事実を打ち明ける。
「ブランとリコンの代わりに、農場の子を殺して焼いた。バレないように」
サンサは弟たちの行方を聞くが、シオンは何もしらないと言ってその場から逃げた。
ルース・ボルトンは城壁の修復と門の補強を終え、半年分の食糧を備蓄。スタニス軍を迎え撃つために万全の体制を整えていたが、手を下さなくてもこの雪と寒さで凍え、飢えて反乱が起きる、と考えていた。しかしラムジーは「南部育ちのスタニスにボルトン家がどう対処するか、北部人に示すいい機会です」と言い、20人の精鋭で先制攻撃をかけたいと申し出る。
黒の城(カースル・ブラック)
療養中のサムウェル・ターリーのもとへ食事を運んできたオリーは、ジョンはどうして野人を助けるために堅牢な家(ハード・ホーム)へ向かったのかと聞く。野人に両親を殺されたオリーにとっては、彼の村が襲われた時、先頭に立って無抵抗の農民に斧を振るっていたトアマンドと一緒に行動していることも理解できないのだ。
サムはオリーに話す。
「ホワイト・ウォーカーは生きている者すべてを襲う。時が来れば、みんなの力が必要になる。ジョンは危険を承知で最後の望みに賭けた。時には厳しい選択に迫られる。間違っているように見てても結局は正しい」
「信じているの?」
「もちろんだよ。ジョンは必ず戻ってくる」
堅牢な家(ハード・ホーム)
スタニスから借りた十数隻の帆船を沖に停泊させ、ジョンはトアマンド、エディソンらとともにガレー船で堅牢な家(ハード・ホーム)に上陸した。トアマンドは鎧骨公(ロード・オブ・ボーンズ)に話し合うために上の者を集めてくれと頼み、ジョンは戦いにきたのではないと説明する。しかし鎧骨公(ロード・オブ・ボーンズ)が聞く耳をもたず侮辱する言葉を吐いたため、トアマンドはその場でかつての仲間を叩きのめした。そして周りの者たちに向けてもう一度言った。
「上の者を集めろ」
ジョンはゼン族や巨人族をはじめとする各種族のリーダーに向けて、我々は仲間にはなれないが結束すればホワイト・ウォーカーを倒せると説く。そして戦っても勝ち目はない、逃げればいいという女の野人に拳(フィスト)で発見したドラゴングラスの剣を鞄ごと差し出して言った。
「一緒に来てくれるなら自由の民にトンネルの扉を開き、”壁”の南にある農地を与える。マンス・レイダーの目的は自由の民の暮らしを変えることだった。我々がそれを与えよう」
条件は真の戦いが始まる時に加勢すること。女は納得したようだったが、ゼン族の男たちはマンスはすでに亡く、目の前にいるジョンがとどめをさしたと知って色めきたつ。
彼らを鎮めようとしたのはトアマンドだった。
「俺はマンスの死に様を見た!俺たちを破った南の王はマンスを火あぶりにするよう命じたが、ジョン・スノウはその命令に背き、慈悲の矢を放ったのだ。勇気がなければできないことだ。俺たちも勇気を出し、鴉と和解しよう」
冥夜の守人(ナイツ・ウオッチ)に親兄弟を殺されたと反論する女に、ジョンが続ける。
「忘れろとは言わない。俺もあの夜、50人の仲間を失った。それでも頼む。子どもたちの未来を考えろ。今結束しなければ子孫は途絶える。長き夜とともに死者たちがやってくる。ここにいるどんな部族にも、冥夜の守人(ナイツ・ウオッチ)にも、南の王でさえ止めることはできない。皆で力を合わせるんだ。勝てる保証はないが、立ち向かうことができる」
女は、ジョンを信頼してここまで来たトアマンドと一緒に行くと言う。すると周りの男たちも賛同した「ここに残っても死ぬだけだ」「鴉の王といれば希望はある」と。しかし、ゼン族の男は違った。
「新しい暮らしなどいらん。ドラゴングラスもな。こいつらの船に乗れば、喉を切られ、震せん湾に投げ込まれるぞ。こいつは敵だ。これまでも、これからも」
結局、すべての部族の賛同を得ることはできなかったが、戦って生き延びるという選択をした野人たちは、ジョンらが用意したガレー船に乗り込み、沖に停泊する帆船を目指してオールを漕ぐ。ジョンは多くの野人をここに置いていくわけにはいかないと言うが、トアマンドは言った。
「マンスでさえ皆を束ねるのに20年かかった。高望みはしないほうがいい。だが、ここでは食い物が尽きても狩るものがない。ついてくるさ」
ジョンとの話し合いに参加していた女も、娘たちを船に乗せて見送った。戦えない子どもと女たちを優先しているのだ。
――と、その時、犬たちがいっせいに吠えだした。ジョンは雪に覆われた背後の山からいくつもの竜巻が発生しているのを見た。それはみるみるうちに野人たちの野営地に近づいている。
「来やがった…!」
危機を感じたゼン族の首領は、中に多くの者たちを残したまま、海側の門を閉じた。間もなく中は静かになった。ゼン族の首領が、門の隙間からなかをのぞき込むと、そこから亡者(ワイト)の手が伸びてきた。海側にいる野人たちは矢で亡者(ワイト)を射ながら後退。そこには軍のような規律はなく、我先にとガレー船に乗り込もうとする。
「門を破られたら終わりだ!」
トアマンドの声に呼応したジョンはガレー船に殺到する野人たちの波に逆らい、門に向かって駆ける。若き冥夜の守人(ナイツ・ウオッチ)たちも後に続く。ゼン族の首領も、娘たちを見送った女も、壁を破って襲いかかってくる亡者(ワイト)を、一体、また一体と倒していくがキリがない。
馬に乗った4人のホワイト・ウォーカーが崖の上に並んでいるのを見たジョン・スノウは、野人たちと話し合いをしていた小屋に置いたままになっているドラゴングラスを取りに行く。ゼン族の首領も続く。小屋は火に包まれており、その向こうから鎧を纏った白髪の男が向かってきた。崖の上に並んでいた騎士のひとりだ。
「任せろ」
ゼン族の首領が白髪の男に向かっていくと、ジョンは散乱した床を探ってドラゴングラスを探す。そしてようやく見つけて手を伸ばすが、ゼン族の首領を一太刀で仕留めた白髪の男に肩をつかまれ、後方にたたきつけられる。そしてその拍子に剣を――ジオー・モーモントから譲り受けたヴァリリア鋼製のロング・クロウを離し、投げ出してしまう。
ジョンは2階から突き落とされながらも立ち上がり、白髪の男の槍をかわしながら他の剣を拾って反撃に転じるが、ホワイト・ウォーカーの槍の前では無力だった。打ち込んだ途端、どの刀も氷となって砕け散ってしまうのだ。ジョンは小屋の外へ逃げ、投げ出してしまったロングクロウを手にする。そして斬られる寸前で体制を整え、ホワイト・ウォーカーの槍を受ける。ロングクロウは砕けなかった。そして一瞬、動きが止まったその隙を突き、ジョンは敵の胴体をなぎ払った。白髪の男は粉々に砕け散った。どうやらヴァリリア鋼の剣はホワイト・ウォーカーを倒す武器となるようだ。
しかし、そうしている間にも新手の亡者(ワイト)たちが崖の向こうから転がりおちてきて、門は破壊された。女の野人は子どもの亡者(ワイト)を前にすると動けなくなり、彼らの餌食となった。ジョンとトアマンド、エディソンは巨人族のウァンウァンの援護をうけながら桟橋に走り、最後のガレー船に飛び乗った。残された野人たちは一人残らず餌食となった。
戦いは終わり、頭に複数の角を持つホワイト・ウォーカーが桟橋に立った。彼が両腕を拡げ、手のひらを天に向けると―――斃れていた野人たちがその眼に青い光を宿し、次々と立ち上がった。
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