土竜の町(モウルズ・タウン)
サンサ・スタークはブライエニー・タースを伴って土竜の町(モウルズ・タウン)へ出かけ、ピーター・ベイリッシュと会う。無事で安心したと言うベイリッシュに、サンサはラムジー・ボルトンとの結婚によってどれだけの傷を負ったのかを話し、暴君だと知って結婚話をまとめたことを激しく責める。
「あなたは家族を奪った怪物から私を逃がし、家族を奪った別の怪物に私を引き渡した」
そして、谷間(ヴェイル)の軍が集結している要塞(モウト)ケイリンに戻れと言った。そんなサンサにベイリッシュは神妙な顔を見せ、最後にこう言った。
「あなたの大叔父、”ブラックフィッシュ”ことブリンデン・タリーが、タリー軍を立て直してリヴァーラン奪回しました。彼に協力を仰げば、忠実な軍隊が手に入るでしょう」
「軍隊?」
「兄君の軍です――腹違いのね」
ブレーヴォス
アリア・スタークは黒と白の館で娘と棒術の修練に励む。しかし力の差は歴然としており、娘は棒を使わずにアリアを叩きのめし「まだ早い。引き返せるうちにここを去れ。私たちとは違うのよ、レディ・スターク」とやりばのない怒りを抑えるように言った。
「――確かにそうだな」
その様子を見ていたジャクエン・フ=ガーは言い、アリアに“顔のない男たち(フェイスレス・メン)”の起源を話して聞かせた。そして、標的は広場の舞台に立っているレディ・クレインという名の女役者だと言い、毒薬の入った小瓶を渡した。
「これが最後のチャンスだ。次はないぞ」
マーシーという名の演劇好きの少女になったアリアは、群衆に交じって舞台を見物する。亡き父エダード・スタークの名誉を汚す安っぽい喜劇に怒りを覚え、眉根を寄せるアリアだったが、サーセイを演じているのがレディ・クレインだと分かり、毒を盛る方法を思案。終演後の楽屋を覗き、彼女がラム酒を飲んでいるのを見て心を決めた。
黒と白の館に戻ったアリアは、ラム酒に毒を盛ることをジェクエンに伝え、”数多の顔”を使ってもいいかと訊ねる。ジャクエンは「まだ早い」と答え、彼女はいい役者であり悪い人には見えなかったという理由で依頼人について知りたがったアリアに言った。
「数多の顔の神に仕える気があるのか?しもべは、疑問など抱かない」
黒の城(カースル・ブラック)
作戦会議の席でサンサは忠実でよそ者を信用しない北部人ならスターク家についてくれると主張するが、ダヴォス・シーワースに「ボルトン家がスターク家を裏切った時、どれだけの人が立ち上がろうとしました?」と問われ、返答に窮した。
北部のことはよく知らないが、人は同じ。いかに勇敢な者でも、負け戦で家族の皮を剥がれるのを見たくはない。諸公たちを納得させるには、賞賛があると示すことが必要だ、というダヴォスの見解には誰もが納得した。
ジョンはその他にも諸公はいると言い、グラバー、モーモント、サーウィン、レーゼン、ホーンウッドなどの名を挙げた。
「皆を合わせれば敵の軍勢に匹敵する。少しずつ整えよう」
ダヴォスは静かに頷いた。
しかし、戦いを知るダヴォスには大きな懸念材料があった。それはジョンがスタークではないということだ。サンサはそれならラムジーもボルトンを名乗れないと言い、こっちにはスタークである自分がいるし、ボルトンが相手ならタリー家も加勢してくれると主張。そしてウィンターフェルから逃げる前にラムジー宛ての使い鴉で知ったと嘘をつき、ベイリッシュから聞いた情報を皆に伝えた。
「朗報だ。”ブラックフィッシュ”の助けが得られるのなら心強い。これならこちらにも勝ち目がありそうだ」
ダヴォスは期待に胸を膨らませた。
リヴァーランへ行ってブリンデン・タリーに事情を説明して協力を求めるよう命じられたブライエニーは、考え直してほしいと食い下がる。ジョン以外の者を信用することができないからだ。サンサはジョンのことを信頼していると説明するが、ブライエニーに「それならばなぜ、ベイリッシュから聞いたと正直に言わなかったのですか」と訊ねられると答えることはできなかった。
そしてサンサ、ジョン、トアマンド、ダヴォス、メリサンドルらは諸公を説得するため黒の城(カースル・ブラック)を発った。
鉄諸島・パイク城
選王民会当日、王の後継者として名乗りを挙げたヤーラ・グレイジョイを弟のシオンが支持。このまますんなりと決まると思われたところへ登場したのは、彼らの叔父・ユーロンだった。
ヤーラは父ベイロンを殺害したとしてユーロンを断罪。しかしユーロンは悪びれることもなくそれを認め、鉄の民の未来のためにやったことだと演説。さらに海の向こうにいるデナーリス・ターガリエンを口説き、ともに七王国を手に入れるとも言った。
それを聞いた鉄の民は沸きかえり、負けを悟ったヤーラとシオンはユーロンが王となるための試練を受けている間にすべての船を奪って鉄諸島から出ていった。
試練を乗り越え、王であることを証明したユーロンは丘の上から鉄諸島を離れていく船団を見送って鉄の民に言った。
「船などいくらでもくれてやるさ。家に戻り、あるだけの木を切り倒せ!今すぐ船を作り始めろ!千の船を差し出せば、この世界を与えてやろう」
ヴァエス・ドスラク
「2度追放して2度舞い戻り、命を救ってくれたあなたを、わたしはそばに置くことも追い払うこともできない」
「――追い払ってください」
デナーリスの言葉を聞いたジョラー・モーモントは、神妙な顔をして下がり、左袖をまくり上げて灰鱗病(グレイスケール)が進行している腕を見せた。
「治るの?」
「わかりません」
「どのくらい持つの」
「それもわかりませんが、どのような最期になるのかは知っています。その前に幕引きを。お仕えできて幸せでした。ティリオン・ラニスターは正しかった。愛しています。これからもずっと」
その場を離れようとしたジョラーにデナーリスは涙声で言った。
「背を向けることは許しません。アンダル人ジョラー。まだ任を解いていないわ。わたしに誓いなさい。命尽きるまで命令に従うと。その病を治しなさい。そして戻って来なさい。七王国を治めるときにはあなたにいてもらわないと」
ジョラーは離れた場所から、10万の遊牧民たちを率いてミーリーンへ向かうデナーリスとダーリオを見送った。
ミーリーン
ティリオン・ラニスターは、賢明なる親方(ワイズ・マスターズ)との和平によって静寂がもたらされた今、ハーピーの息子たちとの争いを鎮め、平和を勝ち取ったのはデナーリスであることを民に知らしめる必要があると考え、その役目を紅の女に委ねようとする。
ティリオンの呼びかけに応じ、ピラミッドの謁見の間に姿を見せたのは、ヴォランティスの紅の寺院の女祭司キンヴァラだった。紅の女を信用できないヴァリスは、スタニスに仕えていた女祭司はスタニス・バラシオンこそが選ばれた王だと言ったが王都を襲撃してティリオンに破れ、ウィンターフェルでも惨敗を喫した事実を述べ、狂信者は過ちを認めないものだと蔑んだ。
キンヴァラがすべては神の意志だが、人は過ちを犯すものだと答えると「神の忠実なしもべであるあなたが、スタニスに仕えた女祭司よりも信用できると言いきれるのか?」とヴァリスはさらに問う。するとキンヴァラはすべての者には存在する理由があると言い、ヴァリスを例に挙げて説明した。
「あなたが幼い頃、二流の妖術師に去勢されていなければ、今、ここにはおらず、神に選ばれし者を助けることはなかった。知識はあなたに力を与えた。でもまだ知らないことも多いのでは?」
キンヴァラは階段を上がり、ヴァリスの腕を掴んで続ける。
「あなたの身体の一部が火鉢で焼かれた時、その炎の中から声が聞こえたはず。その声の主が誰で、何と言ったか教えてあげましょうか?我らの主は同じ。女王の真の友ならわたしを恐れることはありません」
キンヴァラは怪訝な顔のヴァリスに微笑み、背を向けて階段を下りていった。
常冬の大地・ウィアウッドの洞穴
ブラン・スタークは綠視力を使って過去へ飛び、”森の子ら”がホワイトウォーカーを創出したという事実を知る。
現代に戻ったブランがそのことを聞くと”森の子ら”は表情を固くして言った。
「戦があって……身を守るためだった」
「誰から」
「おまえたち……人間から」
三つ眼の鴉が眠っている隙にブランは地面に散乱している動物の骨をつかみ、彼らが生きていた時代へ飛んだ。ウィアウッドの前には亡者(ワイト)たちが幾重にも並んで立っている。その間を縫って進んだブランは、馬に跨がった4騎のホワイト・ウォーカーの前に出る。そしてそのなかの一人に腕を捕まれた。
「見られた!夜の王に見られた!!!」
叫び声をあげて現世に戻ったブランを見おろし、三つ眼の鴉は「触れられたな。おまえを探しにここへ来る」と言った。印を刻まれた以上、もう防ぐことは不可能だと。そして皆に今すぐここを去れと言い、狼狽えるブランに告げた。
「時が来た。おまえがわたしになるのだ」
「でも、もうなれるの?」
「――いいや」
三つ眼の鴉はブランに潜った。
ホーダーと話をしながら出発の支度をしていたミーラ・リードは、洞窟の外の光景を見て立ち尽くす。ホワイト・ウォーカーと無数の亡者(ワイト)たちが視界を埋め尽くしていたからだ。
「逃げて!ブランを連れて!!」
”森の子ら”が叫ぶと同時にミーラは雪原を蹴り、入口に突き刺してあった剣を握って洞窟の中を走った。そして意識のないブランの身体を何度もゆすり、起きないとみるとホーダーに手伝うように言った。
表では”森の子ら”が爆弾を投じて亡者(ワイト)たちの進軍を止めようとする。しかし4人のホワイト・ウォーカーは結界の一部が崩れた隙を見逃さず、洞穴の中へ入り、亡者(ワイト)たちは洞穴を抱く岩肌を駆け上がっていく。
ブランは三つ眼の鴉とともに在りし日のウィンターフェル城にいた。幼いエダード・スタークがジョン・アリンのいる高巣城(アイリー)へ発つその日だった。
ミーラは洞窟の天井から侵入して降ってくる亡者(ワイト)と戦いながらジョンの意識を戻そうとする。頼みのホーダーは恐怖のあまり足がすくんで動けない。”森の子ら”も槍と弓で賢明に応戦するが、続々と沸いてくる亡者(ワイト)を前に為す術がなない。
「このままじゃみんな死んでしまう!ブラン、戻って―――ホーダーに入るのよ!!」
その声は過去のウインターフェル城にいるブランにも届いた。
「友の声を訊きなさい」
三つ眼の鴉に促され、ブランはその場所から現代にいるホーダーに潜った。
ホーダーは荷車にブランを乗せ、その場を離れる。
そこへホワイト・ウォーカーが襲いかかるが、ミーラの放った槍が命中すると粉々に砕け散った。
大狼(ダイアウルフ)のサマーはブランの後を追うことなく勇敢に立ち向かい、亡者(ワイト)たちの餌食になった。そして、三ツ目の鴉もホワイト・ウォーカーの刃を受けてその長い生涯を閉じた。
ホーダーとミーラは通路を駆けて出口へ向かう。しかし、このままで亡者(ワイト)たちに飲み込まれてしまう。
(どうやらここまでね)
最後のひとりとなった”森の子ら”は、ミーラに先に行くように言い、爆弾を手にして亡者(ワイト)たちが押し寄せてくる方を向いて止まった。そして十分に引きつけてから、自爆した。
その炎と煙の向こうからなおも迫ってくる亡者(ワイト)たち。ホーダーは雪で埋まった扉を力任せに押して、どうにか脱出に成功した。
扉をふさいで亡者(ワイト)たちの進軍を食い止めるホーダーに変わって荷車を引いたミーラは、ホーダーに向かって叫ぶ。
「扉を押さえて!」(ホールド・ザ・ドア)
過去の世界でその声を聴いた少年期のホーダー(ウィリス)は、ブランの前で倒れる。
「ホーダドー!」「ホーダドー!」痙攣を起こしたまま何度も叫ぶホーダー少年。
現世では扉に背を付けて立ち塞がるホーダーに、容赦なく亡者(ワイト)たちの手が伸びる。
過去のホーダー少年の叫びはやがて「ホーダー!」に変わり……。
ホーダー少年は「”僕”だー!」から「ホーダー」に。意味が通らないし強引すぎてあきれました。
よくこんな翻訳を許したな……
ゲーム・オブ・スローンズ シーズン6『第5話 扉』地図と登場人物
コメント