ブレーヴォス
『白と黒の館』で死体を浄める作業と館の清掃を続けるアリア・スタークは事態がまるで進展しないことに苛立ちを覚え、「顔のゲーム」に応じようとしない”娘”に訊く。
「あんたは誰?どこから来て何してるの?」
”娘”はウェスタロスから来た。貴族の娘だった。兄弟はおらず唯一の跡継ぎだった――と、抑揚のない口調で生い立ちを語る。そして最後まで語り終えるとアリアに訊いた。
「今のは真実か。それとも嘘か?」
信じ切っていたアリアは虚を突かれて立ち尽くす。
”娘”は「仕事に戻って」と言って部屋を出ていった。
「おまえは誰だ?」
訊かれた気がして目を覚ますと、アリアの居室にジャクエン・フ=ガーがランプを掲げて立っていた。
「どこから来た」
アリアは起き上がり、ウェスタロスから来た。故郷はウィンターフェル。偉大なる城主エダード・スタークの末娘。父は戦死した」
ジェクエンはアリアの手をムチで打った。
「嘘だ」
しかし、アリアはなおも、このブレーヴォスに来た経緯を、これまでの人生を話す。そのたびに何度ムチで打たれても止めようとはしない。ジャクエンはアリアの腕を打ち、娘は数多の顔の神にも自分にも嘘をついていると言った。それでも顔のない者になりたいと譲らないアリア。
ジャクエンはとうとうアリアの頬をムチで打った。声を上げて倒れ込んだアリアは、ジャクエンを睨みつけて叫んだ。
「くだらないゲームはもうたくさんよ!」
「ゲームは永遠に続く」
そう言い残してジャクエンは部屋を出ていった。
アリアは幼い娘を連れてきた男から、娘を楽にしてやってほしいと頼まれる。ブレーヴォス中の治療師に診てもらったが娘の病気はよくならず、財産も使い果たした。もう行く当てはないのだ。
アリアは小さな泉のほとりで力なく横たわる少女の腕に手を添えて言った。
「わたしも病を患い、苦しんでた。でも父は決して諦めなかった。愛していたからよ、あなたのお父さんと同じようにね。わたしを個々へ運び、数多の顔の神に祈った。わたしはこの泉の水を飲み、元気になった」
アリアはちいさな器で泉の霊水を汲み、少女に与えた。死という贈り物を授けたのだ。
その一部始終を見ていたジャクエンは、少女の遺体を浄めるアリアを扉の向こうへと誘った。ロウソクで照らされた長い階段を下りたその先にあったのは、柱と壁に無数の顔が埋められた広間だった。
「覚悟はいいか。耳も鼻も舌も失うことになる。娘のすべてを失うのだ。永遠にな」
ジャクエンはさらに続ける。
「誰でもない者にはまだなれない。だが、別の者にはなれる」

ヴァリリア
村を目指して歩きながら、ティリオンは父タイウィン・ラニスターを殺して逃げてきたことをジョラー・モーモントに打ち明ける。そしてジョラーの父で冥夜の守人(ナイツ・ウオッチ)の総帥だったジオ-・モーモントの最期についても話して聞かせる。二度と出ない勇士だろうと。ティリオンに聞くまで父が死んだことを知らなかったジョラーは、その死因を訊ねる。
「遠征に行った”壁”の向こうで、部下の反乱を抑えることができなかったらしい」
ティリオンが答えると、言葉を飲み込んで「先を急ごう」と言った。
罷免されてもなお、デナーリスに尽くそうとするジョラーにその理由を聞いたティリオンは「彼女に女王の資質があると思うか?ターガリエンが征服した世界で、平和と繁栄が維持できるのか?」と訊ねる。ジョラーはデナーリスこそが正当な後継者だと主張する。
そうして歩いているうちに視界の端で湾内に停泊する船を捕らえてたジョラーは、慌ててティリオンを岩陰に引っ張り込む。奴隷船だ。しかし、時すでに遅く、目の前には剣を抜いた海賊たちが立ちはだかっていた。
首領らしき男は縛り上げたジョラーを痛めつけたあと、部下にティリオンの喉とイチモツを切れと命じる。ドワーフのナニは金になるらしい。命乞いをしても聞き入れられないと悟ったティリオンは、咄嗟に「ドワーフのナニでも干からびていては金にならない」と主張。首領は納得したようで、買手がつくまで生かしておけと言い、2人を船に乗せた。
首領が、闘技場が再開されたが戦う自由民などいるわけがないと嘲笑すると、ティリオンは七王国で屈指の戦士が目の前にいると説明。
「戦士としては年を食っているが、百戦錬磨で彼の歌もある」
生き延びるための手段と理解したジョラーは、ティリオンの嘘に話を合わせ「本当だ」と頷く。
「俺は血盟の騎手を殺した。名はコソ。カール・ドロゴの血盟の騎手だ。闘技場で剣を与えてくれたら証明して見せよう」
首領はにっこりと微笑んだ。
キングズ・ランディング
キングズ・ランディングへ戻ったベイリッシュは、サーセイの前でロラス・タイレルを拘束したのは軽率であり、タイレル家に対する侮辱だと意見する(レディ・オレナと共謀してジョフリー王を暗殺した手前もあり、でしょう)。しかしサーセイは「わたしと婚約していながら男と遊んでいたのだから、侮辱されたのはこっちよ」と反論。ベイリッシュが「人は誰でも意外な相手に惹かれるものです」と茶化すと、「ライサ・アリンのような不愉快な女にもね」と返して閉口させた。
ベイリッシュは自ら葬ったライサを「心優しく善良な女性だった」と語るが、サーセイは「そんな女ではなかった」と断じ、残された息子ロビンに――若き谷間の領主に、あなたという父がいてよかったと話す。
「戦になればロビンはわたしに従います。そしてわたしは王に忠実です」
ベイリッシュの言葉にサーセイは満足する。
そしてベイリッシュは「信頼できる情報」として、サンサは生きていてウィンターフェル城にいる。息子のラムジーと彼女を結婚させる気だと報告。サーセイは「父の後ろ盾を得て北部総督になっておきながら…!」と苛立ちを隠せず、ボルトン家の紋章のように皮を剥いでやると吐き捨てる。
しかしベイリッシュは、スタニスが間もなくウィンターフェル城に進軍をするから、つぶし合いをさせて残った方を叩けばいいと進言。勝者の傷が癒えないうちに攻めるのだと。そして「ジェイミーも叔父上もあてにできないのであればわたしが力になります。谷間の騎士は強者揃いで氷や雪にひるむこともない」と言う。
その見返りとしてベイリッシュが要求したのは北部総督の座だった。つまり、勝ち残った方を谷間(ヴェイル)の兵で潰してやるから北部総督の座を寄越せ、と言ったのだ。
ロラスを救うためキングズ・ランディングへ入ったレディ・オレナはすぐにマージェリーに会い、王妃の兄が男色の罪で幽閉されるなんて許されない、サーセイとはわたしが直接会って話すと言った。
「ロラスを捕らえたのは正教(雀聖下の教徒たち)であってわたしではない」と執務の手を止めることなく他人事のように話すサーセイに、オレナは「タイレル家が賄っている軍や資金はもう不要だということね」と静かに恫喝する。それでもサーセイはわたしが捕らえたのではないと白を切り「同盟を破棄するなんて、そんなに戦がしたいのか」とオレナを責める。
そんなサーセイにオレナは告げた。
「タイウィンは信用できない男で好感を持ったことはなかったが、彼は敵同士で、手を組まなければならないときがあると理解していたわよ」
これに対してサーセイは「当家に敵はいない」と答えてオレナの追求をかわし「雀聖下(ハイ・スパロー)は審問を求めているが、それはロラスが罪を犯したかどうかを調べるだけで、なにもなければ無罪になる。彼は釈放されて両家の同盟も続く」と断じ、話を終わらせた。
雀聖下(ハイ・スパロー)によるロラスへの審問は、レディ・オレナ、マージェリー、トメン、サーセイの立ち会いによって行われた。ロラスは嫌疑――姦淫、男色、神への冒涜を真っ向から否定。レンリー・バラシオンとも他の男とも関係を持ったことはないと断言した。
雀聖下(ハイ・スパロー)がロラスへの審問の終了を告げたので「茶番は終わった」とオレナが思ったのも無理はなかった。しかし雀聖下(ハイ・スパロー)はマージェリーへの審問を始めると告げた。マージェリーは「わたしは王妃よ」と抗うが、七神の前では王妃であろうとい聖なる審問を免れることはできないとの言葉を受け、仕方なく受け入れた。
「兄上への嫌疑をどう思われますか?」
雀聖下(ハイ・スパロー)が問うと、マージェリーは「すべてが嘘です」と胸を張って答えた。そして兄の無実を神々の前で宣誓した。マージェリーは席に戻り、これで形式だけの審問は終わった――はずだった。
しかし、次の瞬間、ロラス・タイレルは目を見開いた。正面の扉からキングズ・ランディングでの姦淫相手である従士のオリヴァーが入ってきたからだ。オリヴァーは雀聖下(ハイ・スパロー)に促されるままにロラスとこれまでに何度も関係を持っていると話し、その場にはマージェリーもいて平然としていた(シーズン5/第1話)と証言。
そして――満を持してサーセイが口を開く。
「彼の証言は名家への侮辱だわ。ハイガーデンの後継者ではなく、従士の言葉を信じるなんてどうかしている」結果が分かっている太后は形だけ、憐憫を込めて庇ってみせたのだ。金づるであるタイレル家との同盟を継続させるために。
オリヴァーは言った。ロラスの太腿には、ドーンの形をしたアザがあると。ロラスはオリヴァーに飛びかかるが教徒たちに取り押さえられた。そして雀聖下(ハイ・スパロー)は告げた。
「これを十分な証拠として、ロラスと王妃マージェリーの裁判を行う。神々の御前での偽証は立派な罪です」
連行されるロラスとマージェリー。
「トメン!わたしは王妃なのよ!トメン!」
マージェリーは振り返り、何度も叫んだが、少年王は何が起きたのか理解できず、狼狽えるしかなかった。
ウォーターガーデンズ
ミアセラ・バラシオンの救出を目指すジェイミー・ラニスターとブロンはドーンの兵士を装ってウォーターガーデンズへ。同じ頃、オベリン・マーテルが残した3人の娘たちも、エラリア・サンドの命を受けてウォーターガーデンズに入った。こちらの目的はミアセラをさらって人質にし、オベリンの仇を討つことだ。
婚約者のトリスタン・マーテルと抱き合っているミアセラを先に見つけたのはブロンとジェイミーだった。
ジェイミーは2人で話そうと誘うが、そこへ3人の娘がやってきたため戦うはめに。そしてほどなくドーラン・マーテルに仕える騎士たちに囲まれ、エラリアもろとも連行される。
ウィンターフェル城
ラムジー・ボルトンとの婚礼の日、ラムジーに命じられたといって訪れたミランダに身を任せ、サンサ・スタークは浴槽に入る。サンサの髪を丁寧に洗いながらミランダは、これまでにラムジーに愛され、飽きられた女たちのこと、そして犬に襲われた女のことを話すが、ラムジーを愛しているわけではないサンサは、落ち着き払ってミランダに言った。
「わたしはサンサ・スターク。そしてここはわたしの家。脅しなんて利かないわ」
身支度を調えたサンサを迎えに来たのは、花嫁の引き渡し役を務めるシオン・グレイジョイだった。シオンは神々の森までご案内すると言い、手を取って欲しいと頼むが「触りたくもない」とサンサは嫌悪。そうしないとラムジーに責められるとシオンは食い下がるが、サンサが受け入れるはずもなかった。
サンサは粉雪が舞うなか、ロウソクの火で照らされた雪道を進み、ウィアウッドの前で待っていたルース・ボルトンと妻のウォルダ、ラムジー・ボルトンと対面した。サンサはラムジーを受け入れると宣誓し、婚礼の儀は何事もなく終了した。
城に戻ったラムジーは、サンサにまだ処女であると言わせたあと、服を脱げを命じる。シオンは部屋から出ていこうとするが、ラムジーがそれを許さない。
「幼い頃から知っている娘が、女になる瞬間をそこで見ていろ」
ラムジーはサンサのドレスを背中から引き裂き、後ろから襲いかかった。
シオンは涙を流しながら、その様子を見ていた。
ゲーム・オブ・スローンズ 完全ガイド シーズン5『第6話/父の仇』地図と登場人物


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