なんてこった、ローラじゃないか……!すべてはここから始まった。
ある朝、カナダとの国境近くにあるツイン・ピークスの湖畔で、地元の高校生ローラ・パーマーの死体が発見される。第一発見者はパッカード製材所のピート・マーテル。保安官の事務所のハリー・S・トルーマンと警部補のアンディ・ブレナンが現場で身元を確認する。ローラの母セーラ・パーマーは娘がいないことに気付いてあちこちに電話をするがみつからず、やがてグレート・ノーザンホテルにいたローラの父リーランド・パーマーのもとに保安官が悲報を知らせにきたと知り、電話の向こうで頭をかきむしって泣き崩れる。
カフェレストラン「ダブル・R・ダイナー」では、ボビー・ブリッグスが部活の朝練をサボってコーヒーを飲んでいる。ローラのボーイフレンドだが、この店のウエイトレスのシェリー・ジョンソンとは不倫関係にあり、勤務が終わると一緒に出ていく。オーナーのノーマ・ジェニングスはあきれた表情で見送る。二人の関係には気付いているようだ。シェリーを車で送るボビー。家の前に夫であるレオ・ジョンソンのトラックが止まっているのに気づき、シェリーを下ろして慌てて引き返す。
ボビーが登校すると保安官のハリー・S・トルーマン、トミー・”ホーク”・ヒル、アンディ・ブレナンが来ており、ローラと一緒にいたのではないかと事情を聞かれる。その間、ローラの死は全校生徒の知るところとなる。
パーマー家でハリーとトミーが事情聴取を行い、セーラは昨夜9時頃には家にいて、おやすみと声を掛けたと話す。そのタイミングで、パッカード製材所に勤務しているヤネク・ポランスキーの娘でローラと同級生のロネット・ポランスキーが昨夜から行方不明になっていると連絡が入る。
パッカード製材所では未亡人でオーナーのジョスリン・”ジョシー”・パッカードが、実質的に製材所をきりもりしていりるキャサリン・マーテルの反対を押し切り、2つの不幸な出来事があったことを理由で製材所の操業を止める。ロネットはその日、下着姿でさまようように線路を歩いてところを発見され、保護される。
自ら運転する車のなかで小型のカセットレコーダーに向かってどうでもいいことを話しかけながら、FBIの特別捜査官・デイル・クーパーが事件解決のためツイン・ピークスにやってくる。
クーパーは現地に入ると、ハリーとともに意識不明で入院中のロネットの様子を見に行く。看護師はひどい暴行を受けているが詳しいことはまだわからないと話す。クーパーはロネットの爪を調べるが何も見つからない。
ハリーは病院内で精神科医のローレンス・ジャコビーに呼び止められ、クーパーを紹介する。ジャコビーは「ローラは自分の患者だったが、そのことを両親には隠していた」という。
クーパーとハリーは蛍光灯が点滅する遺体安置室(撮影中に点滅し始めたが、そのまま演技を続けた)で解剖前のローラの遺体と対面する。すでに検死は終わっているにもかかわらず、クーパーはまたしても爪を執拗に調べる。そして人差し指の爪の間から「R」の文字が入ったちいさな紙片を発見する。
ローラの親友だった同級生のドナ・ヘイワードは、エド・ハーリーが経営するガソリンスタンドを訪れる。そこでローラの秘密の恋人だったジェームズ・ハーリーがエドに託したメモを受け取る。「9時半にロードハウスで」。そこへボビーの親友マイク・ネルソンがやってきて、ボビーが逮捕されたから一緒に警察へ来いとドナに告げる。エドの妻で黒い眼帯をしているネイディーン・ハーリーは「早くカーテンをもってきて」とエドに怒鳴る。
保安官事務所ではクーパーとハリーがローラの所持品を調べる。日記の最後のページに残された「J」のイニシャルと事件を関連づけ、日記に貼り付けてあった貸金庫の鍵を手に入れる。鍵が入っていた袋から見つかった白い粉末をクーパーはコカインだと断言し、ハリーは「あんたはローラを知らない」と言い返す。
「ローラとロネットが暴行を受けたと見られる現場を発見した」と、アンディは泣きながら保安官事務所の秘書ルーシー・モランに電話で告げる。
クーパーとハリーは拘束したボビーを弁護士同席のもとで取り調べる。ローラとドナが草原で楽しそうに踊っている映像を見せ、「J」というヒントを与えて撮影者に心当たりはないかと訪ねる。ボビーは毒づくが簡単なやりとりだけでクーパーは「彼はやっていない」と確信する。
グレート・ノーザンホテルでは、ノルウェーから来たゲストに対して、ゴーストウッドの土地にゴルフ場を建設するための説明が行われている。そこへ思わせぶりな態度でオードリー・ホーンが登場。同級生のローラがこの地で殺害されたことを打ち明けると、ゲストは危険を感じて立ち去る。
クーパーは保安官事務所にドナを呼び、ビデオの撮影者について聞く。ドナは通りかかったハイカーに撮ってもらったと言って涙を流す。クーパーはそれを聞いて彼女を帰すが、ローラの瞳を拡大した映像から、撮影したのはバイク乗りの男だと見当をつけていた。
クーパーはハリーとともにアンディが発見した犯行現場へ行き、血まみれの地面にハートのネックレスの半分が落ちているのを発見。その近くには”火よ 我とともに歩め”と書かれた紙片があった。
ハートのネックレスの片方は、バイク乗りのジェームズが持っている。
オードリーの兄で精神疾患を抱えているジョニー・ホーンは、家庭教師として信頼していたローラが来ないので不安定になる。
クーパーとハリーは、鹿の剥製が横たわる部屋で、ローラが契約していた貸金庫を開ける。そこにあったものは現金1万ドルと、ロネットのセクシーな姿が掲載されている雑誌。同じページには、どういうわけかレオのものと同型と思われるトラックの写真もある。
レオは自宅の灰皿に見慣れないたばこの吸い殻があることに気づく。シェリーは店から持ってきたものだと言い訳してその場を切り抜けるが、レオは「たばこの銘柄はひとつにして、俺が帰る時は部屋を掃除しろ。今度この吸い殻を見つけたら首をへし折るぞ」と恫喝する。
エドは泣きながら電話を掛けてきたノーマを「ロードハウス」へ誘う。待ち合わせは9時半。ネイディーンはカーテンを開け閉めするときの音が気になって仕方がない。
住民に事件について説明するための集会で、クーパーはひときわ目立つジョシーの姿を見つけ、夫アンドリュー・パッカードの死後、香港から来た彼女が製材所の全財産を相続したこと、アンドリューの妹であるキャサリンがそのことで憤慨していることをハリーの解説で知る。そして、グレート・ノーザンホテルを経営する資産家のベンジャミン・ホーンが製材所の土地を密かに狙っていることも。マーガレット・ランターマン(丸太おばさん)もやってくる。
クーパーはその場で、ローラ殺害事件は1年前、この州の南西のまちでテレサ・バンクスという娘が死体で発見された事件と共通点があり、二人が同じ人物によって殺害されたのは明らかだと話す。
犯行現場に落ちていた割れたハートのネックレスをローラが生前身につけていたこと、それを証明するビデオ映像にドナが映っていることをわたしは知っている。ドナはそのことを話そうとはしないが、犯人がハートの片割れを持っているのだろう……と、ドナの父親ウィリアム・ヘイワードは足の不自由な妻アイリーン・ヘイワードに語る。
ドナは妹のハリエット・ヘイワードの協力を得て二階の窓から家を抜け出し、バイク乗りが夜な夜な集まるライブハウス「ロードハウス」へ向かう。
ウィリアムは「ドナが家を抜け出して行き先が分からないから探してくれ」とハリーに頼む。任せろと答えたハリーは、バイク男を捜すためクーパーと一緒にパトカーで「ロードハウス」を張り込んでいる。
「ロードハウス」の店内では、ノーマとエドが密会中。ノーマは過失致死傷罪で服役中の夫ハンク・ジェニングスと公判前に別れると話し、エドにもネイディーンとは別れた方がいいと言う。
車を飛ばしてきたボビーとマイクに遅れて、ドナが自転車で到着する。クーパーはそれを確認してパトカーの応援を要請する。「おまえもローラと同じだ!」と声を荒げてドナに詰め寄るマイクを見て、エドが席を立って止めに入る。ドナはバイク男ジョーイの助けを得て、エドが暴行を受けている隙に外へ。バイクで店を後にした二人をクーパーとハリーがパトカーで尾行するが、途中で見失う。
ジョーイはジェームズにドナを預けて走り去る。ジェームズはドナに昨夜はローラと一緒にいたが、彼女は最悪だったと話す。ドナはさほど驚かず、ローラに普通ではない面があったのは分かっていたという。しかし、ローラが「ボビーが男を殺したようだ」と話していたと聞き、状況の深刻さに愕然とする。
ジェームズはそのことを知ったためにローラは殺されたのかもしれないという。昨夜は取り乱していて、悲しげで絶望していたローラが走り去るのを引き留めなかったことを後悔するジェームズ。くちづけで慰めるドナ。そこでふたりは、自分たちこそが愛し合っていたのだと知る。
アリバイはないが出頭するというジェームズに、ドナはハートのネックレスを隠そうと提案。ジェームズは了承し、その場に埋めて目印の石を置く。
クーパーとハリーはそこから走り去ったドナとジェームズをほどなく捕まえ、ジェームズを収監する。そこには「ロードハウス」で暴れたボビーとマイクもいて、ジェームズを威嚇する。
長い一日を終えたクーパーは、ダイアンへの報告を終えるとハリーがおすすめる「グレート・ノーザン・ホテル」へ。ハリーはバッカード製材所へ立ち寄り、ジョシーと熱い口づけを交わす。その様子を窓から見ていたキャサリンは、リーランドに電話で「また来ている」と話す。
セーラは悪夢で目を覚ます。
その頃、ジェームズが埋めたネックレスを何者かが掘り出し、持ち去っていた。
殺人鬼ボブが生まれた理由は……
セーラが悪夢で目を覚ますラストシーンをよく見ると、背後の鏡に番組スタッフが映り込んでしまっている。実は、このシーンの撮影日、デヴィッド・リンチは家の2階で敷物を拭いていた。ボブ役のフランク・シルヴァはこの時はまだ撮影スタッフのひとりであり、扉の向こうから聴こえてきた別のスタッフの「フランク、閉じ込められちゃうわよ」という声を聞いた瞬間、リンチは彼を何かに閉じ込められているシーンで使う気になったという。もともとフランクが俳優志望だったこともあるが、鏡に映り込んだ彼ををみた時、リンチは「完璧だと思った」と後に語っている。
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