キングズ・ランディング
七芒聖典の理解を深め、すっかり神のしもべとなった王妃マージェーリーに、雀聖下(ハイ・スパロー)は忍耐を重ねて世継ぎを作るべきだと進言。そしてレディ・オレナを「悔悟しない罪人」と決めつけ、新たな流儀を教える必要があると話した。レディ・オレナにも悔い改めるよう促しなさい、という静かな恫喝だった。
マージェリーと話すために聖堂に来たレディ・オレナは、見張り役のようについてくる司祭女ユネラに対してあからさまに敵意を向ける。そんな祖母にマージェリーは、雀聖下(ハイ・スパロー)に対して兵を挙げた暴挙を諫める。そして、ロラスは罪を認めて贖罪し、家名を棄てればハイガーデンに戻って自由に暮らすことができると話す。
オレナはマージェリーにもハイガーデンに帰るように説得するが、マージェリーは司祭女モネラの前ではっきりと言った。
「わたしは王妃よ。夫である王に仕えるのが義務。でも、おばあさまは故郷に戻って」
「あなたを残してはいけない」
そう言ったオレナの前に膝を着き、マージェリーは司祭女ユネラの死角に入って紙片を渡した。
「故郷に帰って。そして祈りと善行に安らぎを見出して。慈母が守ってくださる」
オレナは席を立ち、通路に出たところでマージェリーから受け取った紙片を拡げた。
そこにはタイレル家の紋章であるバラの絵が描いてあった。それはマージェリーからの「必ずロラスを連れてタイレル家に戻る」というメッセージだった。
レディ・オレナがハイガーデンへ帰ると聞き、手を組もうと言ってきたサーセイに、オレナは言った。
「ロラスが投獄されたのはあなたのせいよ。雀聖下(ハイ・スパロー)が町を牛耳っているのもね。あなたの愚行のせいで2つの名家が滅びようとしている」
「罪を犯したのは分かっている。狂信者の軍隊を引き込んでしまった」
「あなたほど不愉快な人も珍しいわ。この年になると記憶が曖昧になるけど、あなたはことさらひどい。孫たちが投獄された時、あなたは嘲笑したわね。そのことは決して忘れないわ。そして、わたしはここを去る。裸足の狂信者に投獄されないうちに」
「あなたは孫娘を。わたしは息子を愛している。彼らを守らなければ……」
「どうするつもり?助けてくれる者はいない。あなたの弟は雀聖下(ハイ・スパロー)に追い払われた。親族には見捨てられ、民からは蔑まれ、どうやって戦うと?あなたは負けたのよ、サーセイ。この苦難の中で、それが唯一の喜びだわ」
ブランドンの贈り物
ジョン・スノウたちは”壁”の南側の野営地を訪れ、ボルトン軍と戦うために力を貸して欲しいと族長たちに頼むが、族長たちは「この戦の相手はホワイト・ウォーカーでも亡者(ワイト)でもない。戦う理由がない」と固辞。
「ジョンがいなければ、皆、夜の王(ナイトキング)の軍団に殺されて、焼け焦げた骨の山になっていたんだぞ」
トアマンドの説得に対しても「マンスがいた頃ならまだしも、今はわずかしか残っていない。俺たちが死ねば自由の民は滅びる」と反論した。
それでもジョンは粘り強く話す。
「ボルトン軍は野人が来たことを知っている。半数が女子どもということもな。戦わなければ、いずれ狙われる。確かにこれは、俺の戦だ。共に戦えと強制はできない。だが、俺たちが生き延びるためには、おまえたちの力が必要だ」
トアマンドが後を引き取る。
「ジョンは自由の民を擁護し、仲間に殺された。蘇ってきたがな……そんな南部人が今までにいたか?彼の恩に報いなければ、俺たちはみんな臆病者だ。そんな者なら、滅びても仕方がないんじゃないか?」
二人の説得に、巨人族のウェイウェイが賛同。他の族長たちも共に戦うと無言で誓った。
リヴァーラン城
ジェイミー・ラニスターがブロンと8,000の兵を伴ってリヴァーラン城に到着すると、お粗末な包囲網を敷いたフレイ家のローサーとウォルダーが、エドミュア・タリーの喉元に剣を突きつけ、城の明け渡しを迫っているところだった。
”ブラック・フィッシュ”ブリンデン・タリーは、その様子を見て眉ひとつ動かすことなく言った。
「やるがいい。喉を切れ」
ブリンデンが姿を消すと、ジェイミーはフレイ兄弟に「指揮は俺が執る」と告げ、捕虜のエドミュアに食事を与えて風呂に入れるよう命じ、ブロンは哨兵を配置し攻城塔の完成を急がせろと言った。
そのうえでジェイミーはブロンに言った。
「”ブラック・フィッシュ”に和平交渉の申し入れを」
「何?ここまできて戦わないのか?」
「相手は老人だぞ」
「手を失った者より強そうだけどな」
城門の跳ね橋の中央でジェイミーと対峙したブリンデンは、和平の提案を拒否。河に囲まれているリヴァーラン城は正攻法で攻撃するのは困難な城であり、2年分の食糧がある。それにここは自らが育った場所。降伏する理由などどこにもないのだ。
「ならばどうして会ったのか」と問うジェイミーにブリンデンは答える。
「籠城は退屈だからだ。そして”王殺し”に会って器を測りたかったからだ」
「それで?どうだった」
「失望したよ」
ブリンデンは背を向けて城門の奥消え、跳ね橋は巻き上げられた。
熊の島(ベア・アイランド)
熊の島(ベア・アイランド)の若き女公リアナ・モーモントは、ボルトン家と戦うために力を貸して欲しいと頼みにきたジョン、サンサ、ダヴォスと面会する。
サンサはリアナという名に親近感があると話し、ジョンは亡き叔父ジオー・モーモントの雑仕(スチュワード)だったと話すが、リアナは学匠(メイスター)のアドバイスを受け、ジョンが落とし子であることやサンサがボルトン家に嫁いだことを引き合いに出して拒否しようとする。
しかし、ダヴォスの「ホワイト・ウォーカーの脅威を退けるにはボルトンを駆逐し北部を統一しなければならない」という演説を聞き、協力を承諾。熊の島から62人の兵を出すことを約束した。
深林の小丘城(ディープ・ウッド・モット)
「断る」
ガルバート・グラヴァーは、城内に招くこともなくジョンらの要請を拒否した。この城が鉄の民に襲われた時、忠誠を誓った北の王ロブ・スタークは異国の女(タリサ)にうつつを抜かして何もしてくれなかった。一方、ボルトン家は城を奪還する時に協力してくれた。どちらが大事なのかは明白だった。
「当家が仕えたスターク家は滅びた」
グラヴァー公はそう言って話を終わらせた。
ヴォランティス
ミーリーンのデナーリス・ターガリエンと協定を結び、ユーロンに奪われた鉄諸島を取り戻す。それがヤーラ・グレイジョイの出した結論だった。
長旅の癒やすためヴォランティスに寄港し、船員たちを連れて娼館に入ったヤーラは、女を抱くこともなくエールを飲むでもなく浮かない表情をしてたたずんでいるシオンに苛立ちを隠せない。
「わたしが必要としているのは、今のクソのようなおまえではない。元のおまえに戻れないのならナイフで手首を切り、幕を引け」
シオンは一緒に行くと決意するが、その心には誰にも消し去ることのできない怯えが刻まれていた。
北部・野営地
北部諸公への要請行脚を終えたジョンたちは、かつてスタニス・バラシオンが天幕を張った野営地に入った。現在の戦力は、野人2,000、ホーンウッド家200、メイゼン家143、モーモント家62。戦力不足は明らかだが、ホワイト・ウォーカーの脅威は目前に迫っている。ジョンはこの戦力でボルトンと戦うことを決意する。
しかし、野営地では各家の騎士や兵隊と野人たちがあちこちでもめ事を起こしており、軍としての規律と結束はないに等しい。
(このままでは犬死にするだけだわ……)
リアナが野営地に使い鴉を持ち込んでいるのを見たサンサは、急いで文書をしたためる。勝つために、サンサは最も頼りたくない者援軍を要請したのだった。
ブレーヴォス
アリアは酒場でくつろいでいる船長に大金を見せてブレーヴォスを離れる手段を確保する。しかし、その直後、老婦人の顔をした黒と白の館の娘に腹部を何度も刺され(ジャクエン・フ=ガーは苦しませずにやれと言っていたのに……)、海に転落する。
どうにか娘の追撃を逃れて岸にたどり着いたアリアは血を流しながら町をさまよい……。
三叉鉾河周辺
ブライエニー・タースとの一騎討ちに敗れ、瀕死の重傷を負ったサンダー・クレゲインは、通りかかった司祭に命を助けられていた。怪我が治ってからは民と行動を共にし、木材を運び、斧で蒔を割って聖堂の建築作業を手伝うが、顔の火傷もあって民からは距離を置かれている。
司祭は民に兵士だったころの残虐な振る舞いを話して聞かせる。村に火を放ち、農家の作物を強奪し、母親の目の前で少年も殺した。
「自分に今、できるのは善行を重ねることだけだ。それは誰にでもできる。悪事から抜け出すのに遅すぎることはない。人助けをしろ。いつでもやり直せる」
サンダー・クレゲインの胸にも去来するものがあった。
そんなサンダーの前に旗印なき兄弟団(ブラザーフッド)の偵察隊がやってくる。馬と食い物を求めた彼らにサンダーは不穏なものを感じ、司祭に言った。
「旗印なき兄弟団(ブラザーフッド)が信じるのは紅い神だ。ここには食糧も鋼もあり、女も幼い子どももいる」
しかし司祭は暴力は病気だと言い、やり場のない想いをぶつけるように蒔きを割り続けるサンダーに夕食だと告げた。サンダーは「今夜は冷える」と言って蒔きを割り続ける。
やがて、森の奥で枝を伐採していたサンダーの耳に、馬のいななきと女の叫び声が届く。サンダーが戻ると夕飯を食べていたはずの民は皆殺しにされ、司祭は建設中の聖堂に吊されていた。サンダー・クレゲインは、その目に再び憎悪と復讐の炎を宿し、斧を手に取った。
ゲーム・オブ・スローンズ シーズン6 『第7話 壊れた男』地図と登場人物
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