
アニーをさらったウィンダムを追って、クーパーはブラック・ロッジへ。
巨人、こびと、火…そして、”火よ 我と共に歩め”という言葉。クーパーはそれらを反芻しながら黒板の絵文字と向き合い、ブラックロッジへの入口を解明しようとする。12匹のニジマスを積んだトラックを盗まれたと憤慨して保管官事務所へ来たピートの証言から、入口はゴーストウッドの森にあるグランストンベリー・グローヴだと推測するクーパー。ホークが血染めのタオルと日記の紙片を見つけたのもその場所であり、アーサー王を埋葬したという伝説の地であることから、クーパーたちは間違いないと確信する。
そこへ丸太おばさんが瓶詰めのエンジンオイルを持って入ってくる。彼女の夫は、死の直前の夜にこれを持ち帰り「これが入口への道だ」と話していたという。その臭いは、ジャック・ルノー殺害事件の捜査時、隣の部屋に入院していたジャコビーが証言した”焦げたエンジンオイルのような臭い”と合致する。ロネット(すっかり元気になっている)を呼んで確かめると「ローラが殺された夜の臭い……!」と言って怯えた。
コンテスト会場でアニーをさらったウィンダムは、ピートのトラックでグランストンベリー・グローヴへやってくる。世界の果てへ連れていくというウィンダム。どうして私なのかと聞くアニーにウィンダムは「前の時と同じだ。奴が妻に恋をした時も死の淵まで連れて行ってやった」と答える。
木のサークル内に引っ張り込まれたアニーは、生き物ではない何かをみて叫び声を上げ、我を失う。ウィンダムはその彼女の手を引いて赤いカーテンの奥=ブラック・ロッジへ進む。
暗闇に包まれたコンテスト会場で頭を負傷したネイディーンはそのショックで記憶が戻る。目の前で愛を語るマイクが誰だか分からず、自宅でエドと一緒いるノーマを見て叫ぶ。
「私のカーテンレールはどこ!」
ネイディーンと結婚するもりでいたマイク、一緒になれる喜びをかみしめていたノーマとエドは、現実に引き戻される。
ヘイワード邸ではベンジャミンが秘密を打ち明けようとする。最近のアイリーンの言動からベンジャミンが本当の父親なのだと思い絶望したドナは、帰宅したウィリアムにすがって泣きじゃくる。そこへベンジャミンの妻シルヴィアが来て言う。「この一家を破滅させる気なの?」それでも口を開こうとするベンジャミンを、ウィリアムは力任せに殴りつける。
クーパーとハリーは、ウィンダムを追ってグランストンベリー・グローヴへ。乗り捨てられたトラックの脇から森の中へ進んでいく。少し歩いたところで立ち止まり「一人でいかなければならない」とつぶやいたクーパーはハリーからライトを受け取ってさらに奥へと入っていく。そしてクーパーはスズカケの木の根本にオイル溜りを見つけ「ここが入口だ」と言い、足跡に沿って歩く。すると目の前の赤いカーテンが。後を追ってきたハリーはクーパーの姿が消えるのを見届けた。
翌日、オードリーはゴーストウッドの開発資金を援助する銀行へ行き、貸金庫の入口の鉄格子と自身の体を鎖で繋いでから老いた職員デルに伝える。「ガゼット新聞編集長のミルフォード・ジュニアに電話してください。”ゴーストウッドの開発資金を援助に抗議して、町議会が開かれるまでここから動かない”と言っている女性がいると」
そこへアンドリューとピートが来て、キャサリンに内緒で持ち出した鍵をデルに見せる。どうやらここの貸金庫の鍵で間違いないようだ。二人はデルの案内でオードリーが自らを縛っている扉を開けて中へ進み、期待を膨らませて貸金庫を開く。しかし、そこには”お返しだよ トーマス”と書いたカードがあり、その奥には爆弾が。アンドリューが「くそっ!」と叫んだ次の瞬間、爆発音とともに銀行の窓ガラスが吹き飛んだ。
アニーはどうしたぁ?クーパーに憑依したボブは笑い続ける。
「ダブル・R・ダイナー」で食事を楽しんでいたガーランド夫妻のテーブルへ、ジャコビーに連れられてセーラがやってくる。セーラは心ここにあらずという落ち着かない表情でガーランド少佐の手を握りこう言った。
「私はクーパー捜査官とブラック・ロッジにいる。私はあなたを待っています」
ブラック・ロッジの待合室へ入ったクーパーに、赤いスーツのこびとはここには何人かの友達がいると言う。最初に現れたのは、以前も夢に出てきたローラ・パーマーによく似た黒いドレスの女(ローラ・パーマーと断言できるシーンがないのでこう表記しておきます)。彼女は「25年後にまた会いましょう」(「ツイン・ピークスThe Return」が放映されている2017年がそれにあたります)と言って去っていく。
次は世界最高齢のルームサービス。クーパーにコーヒーを出したあと、赤い蝶ネクタイの巨人に姿を変える。彼は「まったく同じもの」と言って消える(夢に出てくる巨人の現実世界における姿が、世界最高齢のルームサービスなのだろう)。
コーヒーを飲もうとしたクーパーに赤いスーツのこびとはボブの名を呼びこう言った。
「火よ 我と共に歩め」
待合室は暗転し、ミス・ツイン・ピークスコンテストでアニーがさらわれた時と同じように、無数のフラッシュライトが闇を走る。クーパーは立ち上がり、他の部屋を探索する。カーテンの色も床の模様も同じ別の部屋をさまようクーパーの前に現れたのはマデリーン。彼女は言った。「わたしのいとこに気をつけて」
そうかと思えばまた黒いドレスの女が現れ、白目を剝いて叫び声を上げる。こびとは彼女を生き霊だという。
いつの間にかクーパーの腹部からはおびただしい出血が。よろめきながら別の部屋に入ると、かつてウィンダムによって殺害されたキャロラインと瀕死の状態のクーパーが床に倒れていた。むくりと起き上がったキャロラインはアニーとなり、次の部屋では黒いドレスを着たアニーが「あたしを殺した男の顔を見た。あたしの夫だった」という。
次の瞬間、アニーの顔はゾンビのように白目を剝いたキャロラインになり、そうかと思えば花柄ドレスのアニーになり、その次はローラに似た黒いドレスの女になり、ウィンダムになるのだった。
ウィンダムは笑いながら言う。「おまえの魂をおれによこせば、アニーは生かしてやる」
クーパーは魂を差し出そうとするが、目の前に炎があがったかと思うとウィンダムを捕らえた殺人鬼ボブが笑いながら現れて言う。
「おまえは行け。こいつにおまえの魂を奪うことはできない。おれが奴の魂を奪うのだ」
目を見開き、絶叫するとガックリと頭を垂れるウィンダム。ボブは笑いが止まらない。それを見届けクーパーはそこから立ち去るが、白目のクーパーがやってきて一緒に笑う。
通路に出たクーパーの前に現れたのは白目のリーランド。「わたしは誰も殺していない」という彼をやり過ごして次の部屋のカーテンを開けるクーパーを、白目のクーパーが笑いながら追いかける。スピードを上げるクーパー。追いついてくる白目。やがて白目の手がクーパーの背中に届き、ボブの笑い声がブラック・ロッジにこだまする。
翌朝、入口でずっと待っていたハリーに保護されたクーパーはホテルのベッドで意識を取り戻す。「アニーは大丈夫だ。病院にいる」と聞いたクーパーは「歯を磨かなくては」と言って起き上がる。
洗面台に歯磨き粉をすべてしぼり出したクーパーは、鏡に向かって激しく額をぶつける。鏡はひび割れ、クーパーの額からは鮮血がほとばしる。
鏡の中で血を流しているのは――ボブだ。
「アニーはどうした?」
同じ言葉を繰り返し、クーパーに憑依したボブは笑い続ける。
(おわり)
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