よくは分からんが、解決できるのはたぶん君しかいない。幻を追うなり何なり好きにやれ。
遺体で発見されたマデリーンの薬指の爪からは「O」の紙片が見つかり、右手に付着していた北極キツネの毛からは剥製用の防腐剤が検出された。リーランドにマデリーンの連絡先を聞こうとするハリーを前にして、クーパーは「24時間で解決する。誰にも知らせるな」と強い決意をにじませる。そんなクーパーをアルバートがバックアップ。「よくは分からんが、解決できるのはたぶん君しかいない。幻を追うなり何なり好きにやれ。急がないとまた殺される」と伝える。そしてホークも「あんたは正しい道にいる。どこに行くかは気にせずそのまま進めばいい」と励ます。
マデリーンの死をまだ知らないジェームズとドナは「ダブル・R・ダイナー」で将来を誓い合う。カウンターにはヴィヴィアンがいて、ノーマがつくったオムライスを酷評する。「私のやることは全部気に入らないのね」と憤慨するノーマ。その近くの席ではアンディが食事をしている。彼が上の空でなにやらつぶやいているのが気になったドナは「今のフランス語?なんて言ったの?」と聞く。アンディは「僕の心は独りぼっち」と答える。「それ、トレモンド婦人の孫が言ったことばよ」というドナに「ハロルドの遺書だよ」と教えるアンディ。ドナはクーパーに会いに行く。
クーパーに会ったドナは「ハロルドはけっして他人の言葉を借りたりしない。きっと何かある」と主張し、クーパーをトレモンド婦人の邸に案内する。しかしそこにいたのは見たこともない女性で「母は3年前に亡くなった」と告げる。孫にも会ったし、そんなはずはないと食い下がるドナ。するとドナ・ヘイワードの名を聞いた女性は少し待つように言い、「ハロルドが死んだ翌朝、ここの郵便受けに入っていたのよ」といってドナ宛ての封筒を渡す。
開封すると、ローラの日記の1ページ目が入っていた。ドナがクーパーに読んで聞かせる。
2月22日。ゆうべ奇妙な夢を見た。私は小さな男と老人と共に赤い部屋にいる。私はボブの正体を老人に告げようとする。でも、声がおかしくてうまく話せない。私は老人に近づいて秘密を打ち明けた。ボブを止めなければ。ボブが恐れるただ一人の男の名は、マイク。あの老人がそうなのか?夢を見ている男の人には聞こえたかしら。彼ならきっと信じてくれる。
2月23日。今夜、私は死ぬ。そうすればボブから逃れられる。あいつを引き離せる。ボブは私を欲しがっている――。
僕も同じ夢を見たんだ。そう言い残してクーパーはジェラードのもとへ向かう。
脱水症状を起こしホテルのベッドで呻いているジェラードにクーパーは「マイク」と呼びかけ、答えを解くのを助けてほしいと頼む。マイクは、自分とボブは一緒に人を殺していた完璧な関係で、黄金の輪だったと言う。輪から指輪を連想し、赤い蝶ネクタイの巨人に指輪を持っていかれたことを話すクーパー。マイクは彼を知っていて、ボブを捜すのを手伝ってくれるはずだと話す。どうすれば会えるのかと聞くクーパーに、マイクは「君は必要な手がかりをすべて知っている。答えはここにある」と言ってクーパーの胸に手をあて「責任は重大だ」と言い残して意識を失った。
部屋を出たクーパーを「あなたを存じています」と世界最高齢のルームサービスが呼び止め、「ミルクは冷めるが温まってきましたよ」と言って去っていった。「温める」。反芻するクーパー。
犯人はここにいて、誰なのかを明らかにするために魔法と呼ぶしかない方法を使う。
ハリーはローラ殺害容疑で起訴したベンジャミンのオフィスで家宅捜査の指揮を執っている。通話記録は事件の夜、ベンジャミンがローラに電話していたことを示しており、「日記のことで」と言ったリーランドの証言に嘘はないようだ。北極キツネの剥製がここにあることから、ハリーはマデリーンはここで殺されて滝に捨てられた。ローラもマデリーンもベンジャミンが殺したと断定する。
アルバートはマデリーンの死亡推定時刻を述べ、ベンジャミンの血液型を教える。
キャサリンはタジムラに変装したまま留置場を訪れ、ゴーストウッド開発に関する契約書にサインしろ、できないのなら500万ドルを返金せよと迫る。無実が証明されてここを出られるまで待ってほしいと頼むベンジャミンにキャサリンは赤いペ二キュアを着けた素足を見せる。正体を知ったベンジャミンは無実を証明できるだだひとりの証人が生きていることに歓喜し、要求どおりゴーストウッドと製材所をキャサリンに返す契約書にサインする。しかし、キャサリンは証言するかしないかはこれから考えると言って出ていく。「キャサリーーーーン!」はめられた男の絶叫が留置場に響き渡る。
ドナはローラのサングラスをつけてパーマー邸を訪れ、リーランドにローラの日記はもうひとつあったことを教える。そこへ電話があり、マデリーンがまだ戻っていないことを知ったドナ。心配はいらないと言ってガムを噛むリーランド。レコードに針を落とし、ボブは咆吼を上げる。ドナを激しく抱きしめると、玄関のベルが鳴った。現れたのはハリーで、「また殺人があった。すぐに来てくれ」と言った。その瞬間、ドナはマデリーンが殺されたことを察知し、泣きながらジェームズのもとへ向かった。
ドナからそのことを聞いたジェームズは「救えたのに」と自分を責め、「置いていかないで!」と叫ぶドナの声に耳を貸すこともなく、ツイン・ピークスを出ていく。
「ロードハウス」のテーブル席にはベンジャミンの姿があり、カウンターにはアーノルドが。稲光がとどろくなか、ハリーとリーランドが入ってくる。クーパーは続いてやってきたエドにテーブルを片付けてくれと頼み、レオとボビーを連れたホークが入ってくるとフロアの真ん中で話を始める。「ローラとマデリーンを殺害した犯人はここにいて、誰なのかを明らかにするために魔法と呼ぶしかない方法を使う」と――。
柱時計が3時を示すと、世界最高齢のルームサービスの手をとってガーランド少佐が入ってくる。老人がクーパーに何かを渡すと、リーランドは「子どもの頃よく噛んだ。一番好きなガムだ」と微笑みかける。老人は答える。「あなたの好きなガムがまた流行します」。
瞬間、クーパーの前で、夢に現れた赤い部屋が再現される。赤いスーツのこびとが腕を振って踊り出し、ローラによく似た黒いドレスの美女は、25年後のクーパーの耳元でささやく。「父が私を殺したの」
稲光がとどろき、クーパーの目の前に現れた赤い蝶ネクタイの巨人は、指輪を返して消える。ガムを噛み、それを受け取ったクーパーは、ベンジャミンと弁護人のリーランドを連れて署に戻れと命じる。
ローラは勇敢に奴らと闘った。入るのを許さなかった。
署に戻ったクーパーたちは、ベンジャミンと話をすると見せかけて、リーランドを取り調べ室に閉じ込める。欺されたとわかり凶暴な声を上げて暴れ出すボブ。
「彼を犯人とするには証拠が必要だ」
ここでも正論を述べるハリーに、クーパーは自白させると言ってリーランドに手錠を掛け、ボブの取り調べを開始する。
ボブはローラとマデリーンを殺害したことをあっさりと認め、クーパーに「あんたのピッツバーグの事件と同じだ!」と吐き捨てる。そしてリーランドの体はもうボロボロだと話す。
「もう十分だ」。ハリーの一言でクーパーたちは部屋を出ていく。
「血液型からベンジャミンが犯人でないことは分かっていたんだ」とクーパー。そして続ける。
「赤いスーツのこびとと同じようにリーランドも踊っていたし、ジャック・ルノーの殺害を境に髪の色がボブと同じになった。子どもの頃会った男ロバートソンは”ボブの息子”を意味する。爪の文字は自分の名前だ。ROBT。悪魔の署名だ。殺害した理由は日記に書かれたからだ。気づいてページを破いた。あの夜電話したのはリーランドで、彼こそがローラを貨車に連れ込んだ第三の男だ。マデリーンはローラに似ていたから殺した。ローラとの別れに耐えられなかったか、ボブのことを知られたからだろう」
その解説に納得し「火よ、我ととに歩め!おれはまた殺す!!」と大声で叫ぶボブを残して引き上げようとするハリーたち。次の瞬間、ルーシーのおなかの子どものことでアンディを交えて話をしていたリチャードのタバコの煙に反応してスプリンクラーが作動。全身ずぶ濡れになったリーランドは鉄の扉に何度も頭をぶつけ、血を流して倒れ込む。クーパーたちが踏み込むと床が真っ赤に染まっていた。
「ローラを、娘を殺した。すべて私がやった。許してくれ」
ボブは出ていったらしく、血まみれになって許しを請うリーランド。
「幼い頃、遊びたいといって夢に出てきたボブが私のなかに入ってきた。そして私にひどいことをたくさんやらせて、ほかの人間の命も欲しがった。しかしローラは勇敢にやつらと闘った。入るのを許さなかった。そこで奴らは私にテレサを殺させた。そして言った。ローラを渡さなければおまえに殺させる。ローラは死んでも嫌だと言って拒んだ。だから奴らは私に――」
愛していたのに取り返しのつかないことをしてしまったと泣きじゃくるリーランド。クーパーは虫の息になった彼の頭を抱きかかえ「光のなかに入れ」と導く。
「気がふれていたんだ」
翌朝、疲れ切った表情で森に座り込み、そう結論づけようとするハリーに、アルバートは「そうかな。みんな幻でしかボブを見ていないじゃないか」と反論。事実から目を背けることを許さない。銀河系外を飛び交うメッセージを記録しているガーランド少佐は「天と地には我々に思いもつかないことがたくさんある」と意味深なことを言う。そしてクーパーは「これほどの悪がどこから来たのか知らなければ防げない」と言って前を向いた。
コメント