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ディア・メドウ
ノースダコタのファーゴにいたFBIのチェスター・デズモンドは、主任捜査官のゴードン・コールから連絡をうけ、ディア・メドウの町で発生したテレサ・バンクス殺害事件を担当する。
ポートランドの飛行場でゴードンと会い、鑑識係のサム・スタンリーを紹介されたデズモンドは、髪から靴まで赤で統一したダンサーのリルの奇妙な表情と動きを見てからフィラデルフィアへ行くというゴードンと別れ、サムとともに車に乗り込む。
ハンドルを握りながらデズモンドは、リルの服装、表情と動きが捜査の現状、地元の警察との複雑な関係を物語っているとサムに説明。しかし彼女が胸に挿していた青いバラの意味だけは分からないらしい。

ディア・メドウの保安官事務所に到着したデズモンドは捜査に協力する気のない事務員と助手を力づくで従わせ、怪力自慢の保安官からテレサ・バンクスに関する捜査資料を押収。隣接する遺体安置所でサムとともに検視を行った。サムは、死因は鈍器の殴打による頭蓋骨骨折と断定。左手の薬指に指輪の跡があるが遺留品には見当たらず、その指の爪からは”T”とタイプされた紙片が見つかった。
明け方近くまで検視作業をおこなったデズモンドとサムは、テレサが働いていた『ハップス・ダイナー』へ移動し聞き込みを始める。年輩の女性ウエイトレスのアイリーンによるとテレサはヘロイン中毒で、殺される3日前から左腕を動かせなかったらしい。サムはヘロインのせいではなく心理的なものと推測する。
その後、テレサが住んでいたトレーラーハウスを家宅捜索した2人は、生前のテレサの写真を確認。左手の薬指には指輪があり、緑の宝石が輝いていた。やがてテレサの部屋を眼に氷嚢をあてた隣人らしき老人が覗きに来るが何者かは分からない。
トレーラーハウスの電柱には”6”のプレートが取り付けられている。濃いコーヒーを煎れてくれた管理人はなぜか眼を潤ませて言った。「俺は苦労してきたんだ。今の生活を失いたくない」
テレサの遺体とともにポートランドへ発ったサムを見送ったデズモンドは、蒼いバラの謎と指輪の行方を突き止めるため単独で捜査を続行。再びトレーラーハウスへ向かう。デズモンドは電柱の”6”を確認した後、灯りのついているハウスへ。その床下にテレサのものと思われる指輪を発見して、手を伸ばす・・・・・・。
フィラデルフィア
2月16日の朝10時。デイル・クーパーが夢に見たというその日時、2年間も行方不明になっていた捜査官のフィリップ・ジェフリーズがフィラデルフィアのFBI本部に姿を現した。ジェフリーズは「ジュディのことは話したくない」と前置きした上で、別の世界からきたこびと、ボブ、トレモンド婦人とその孫、ジャンピングマン(ピノキオのような鼻の白面の男)、2人の木こり、電気技師らの集会を見たという。
そして「奴らをつけていった」「僕らは夢のなかで生きている」「指輪」「コンビニエンスストアの上だ」「ちくしょう!何かを見つけたんだ」「奴らはそこにいたんだ」――と断片的に言葉を発した。別の世界からきたこびとはグリーンのフォーマイカのテーブルを撫でながら”ガルモンボジーア”と声を発し、”この指輪で汝らは結ばれる”と笑う。
そしてジェフリーズはまたしても姿を消した。映像にその姿は残っているが、正面玄関は通過していないという。その直後、デズモンドが行方不明になっていることが判明した。

ディア・メドウ
デズモンドの行方を捜すためディアメドウへ飛んだクーパーは、トレーラーハウスで管理人から話を聞く。デズモンドが消えたと思われる場所にあったトレーラーはすでに撤去されているが、借主だったのは老女とその孫で名前はトレモンド。その前の借主も同じ名前だったという。デズモンドが残していった車のフロントガラスには赤い文字で”Lets Rock(さあ、やろう)”と書いてあった。
クーパーはテレサが殺害されたウインド川の岸辺に立ち、青いバラと指輪、デズモンドの失踪、テレサの薬指から発見された紙片について思いを巡らせ、レコーダーに音声を残した。
1年後 ツイン・ピークス
2月18日
学校のトイレでコカインを吸っている高校生のローラ・パーマーは親が公認するボビー・ブリッグスと交際しながら同学年のジェームズ・ハーリーにも身体を許している。親友のドナ・ヘイワードは誠実なジェームズをすすめるが、ローラは虚空を見据えてつぶやく。
「火のなかに飛び込む・・・永遠に。天使すら助けてくれない」
ある日、日記のページが破られているのを知ったローラは、全身を震わせて園芸家のハロルド・スミスの自宅に向かい、ボブのしわざだと告げる。その姿を見た者は誰もいないけど、12歳の時から私を狙っていたのだと。そしてあり得ないと否定するハロルドの胸ぐらをつかみ、歯をむき出して告げた。「火よ、我と共に歩め・・・!」
そして我に返ったローラは涙を流しながら日記を預かってほしいと頼む。ボブはあなたを知らないから安全だと。
フィラデルフィア
フィラデルフィアのFBI本部に戻ったクーパーは、アルバート・ローゼンフィールドの前で自身の予感について話す。犯行はもう一度行われる。次の犠牲者は女性。髪の色はブロンド。高校生。セックスを楽しみ、ドラッグもやる。しかし助けを求めている。今はたくさんの食べものを準備しているところだ――。
ツイン・ピークス
2月18日
その頃、ローラは『RR(ダブルアール)ダイナー』で食事宅配の準備をしていた。ローラがひとりになると駐車場にトレモンド婦人とその孫が現れて手招きをした。婦人は「壁に掛けたらすてきよ」と言って額にいれた絵(部屋の壁に赤い薔薇が一面に描かれている)を渡し、白い仮面を着けた孫は「仮面をした男がページがちぎられた本を探している。隠し場所へ向かっている。今は扇風機の下」と言った。
急いで自宅に戻ったローラがみたのは、日記を探すボブの姿だった。絶叫して自宅を飛び出し、身を隠すローラ。しかし、その直後、自宅から出てきたのはボブではなく父親のリーランドだった。ローラはリーランドがボブに取り憑かれたと知って泣き叫ぶ。
ドナに会ってどうにか落ち着きを取り戻したローラだったが、自宅の食卓で向き合ったリーランドは人が変わったようになっていた。爪が汚れているからすぐに手を洗えと激高し、ハート型のペンダントの持ち主についてしつこく追求するリーランド。ローラは涙を浮かべて怯え、母は声を荒げる。
しかしその夜、部屋を訪れた父はいつもの父だった。手をとり、涙を浮かべて「愛している」と語る姿を見てローラは父はボブに完全に取り憑かれたわけではない、懸命に抗っているのだ、と感じる。
トレモンド婦人から受け取った絵を壁に掛けて眠りについたローラは不可解な夢をみる。
婦人に誘われて絵と同じ花柄の部屋を進むと婦人の孫ピエールが立っていて指を鳴らす。
次の瞬間、テーブルに置かれた指輪が映し出される。
赤い部屋に入ってきたデイル・クーパーに、赤いスーツのこびとは「わたしは”腕”だ」と言い、古い西部劇に出てくるインディアンのような雄叫びをあげる。そしてテーブルの上にあった指輪を手に取り、差し出す。それはテレサ・バンクスが付けていたものと同じデザインだ。
「ローラ、指輪を受け取ってはいけない」
クーパーは静かに諭す。
ローラが半身を起こすと、隣には花柄のドレスを着て、鼻と口から血を流した女性が横たわっていた。女性はアニーと名乗り「善いデイルはロッジから出られない。日記にそう書いて」と言って消えた。次の瞬間、ローラの手には緑の指輪があった。それを握りしめて立ち上がり、部屋のドアを開けるローラ。トレモンド婦人から受け取った絵にも、ドアを開ける女性の姿がある・・・。

2月19日
朝、目覚めたローラは壁から絵を外した。手の中に指輪はない。
レオ・ジョンソンにコカインの売買を断られたボビー・ブリッグズは、ロードハウスの『BangBangBar』のバーテンダーのジャック・ルノーに連絡する。ジャックは「2日後の真夜中、木を引く音がする場所へ来い」と告げる。
夜、ひとりで『BangBangBar』へ出かけたローラは丸太を抱いた女性――マーガレット・ランターマンに呼び止められる。マーガレットはローラの額に手をあてて言った。
「こういう火が燃え出すと消すのは難しい。無垢な弱い枝は真っ先に燃える。風が起こり、すべての善は危険にさらされる」
ひとしきり泣いた後、ジャック・ルノーの合図でテーブルに来た2人の男、心配して後をついてきたドナと共にカナダの店に移動。ドラッグを混入した酒を回し飲む。そこで再会したのは、ベンジャミン・ホーンが経営するカジノ兼売春宿の『片目のジャック』で一緒に働いていた同級生のロネット・ポランスキーだった。
ロネットは1年前に失踪したテレサ・バンクスの名を出し、彼女が誰かを強請っていたと話す。するとジャックも当時を思い出し「そういや俺のところにも電話をしてきたな。おまえたちの父親はどんなかなって聞いてきた」
父とテレサに何かあったのかと疑うローラ。ジャックは「木曜日に山小屋へ来い」と誘った。
2月20日
ローラの服を着て酩酊し、知らない男と絡み合っていたドナを連れ帰ったローラは、翌朝、何も覚えていないというドナを抱きしめ「わたしのようにならないで」と諭す。
リーランドと一緒に車で自宅へ向かう途中、ローラは「なんだか焦げ臭い。エンジンが焼けているんじゃないの」とリーランドに確かめる。臭いの正体は後ろから近づいていたキャンピングカーだった。キャンピングカーは足の悪い老人が横断中の歩道でUターンしてリーランドの車に横付けした。
運転していたのは片腕の男――マイクだった。マイクは運転席からリーランドに向かって叫ぶ。
「おまえはコーンを盗んだな!缶に入れておいたんだ。コンビニの上でだ」
そしてローラの顔を確かめて続ける。
「お嬢さん。その女の顔を見た!ドアは開いていた!そこには静寂があった!フォーマイカのテーブルのようにな!綱(糸)は必ず引きちぎられるぞ!パーマーさん。綱(糸)は引きちぎられるんだ!」
右手の小指にはめた緑の宝石の指輪を見せて、マイクはなおも叫ぶ。
「あれは彼だ!あんたの父親だ!!」
「やめて!!」耳をふさぐローラ。
ブレーキとアクセルを同時に踏んで絶叫するリーランド。
マイクはタイヤを鳴らして去っていった。

”コンビニの上”は実在しない場所という解釈でいいと思います。日本のコンビニはマンションやオフィスビルの1階に入っている店舗も多いですが、この時代のアメリカには平屋建てのコンビニしかなかったのでは?
大違いなのは「糸」(字幕)と「綱」(吹替)。「糸」なら感情が切れるとも取れますが、「綱」は太くて頑丈なイメージ。リーランドの精神もしくは身体が、もう保たないとボブに警告したのでしょうか・・・。
近くのモーターショップに車を入れ、まるで見知らぬ男とのトラブルであるかのような口ぶりで弁明するリーランド。その脳裏をよぎったのはテレサ・バンクスの姿だった。リーランドはテレサの肉体に溺れ、モーテルで関係を重ねていたのだ。そして知ったのだ。ローラが『片目のジャック』でカラダを売っていることを・・・。
自宅に戻ったローラは、かつて『片目のジャック』で会ったテレサ・バンクスが、片腕の男、赤いスーツのこびとと同じ指輪をしていたことに気づく。
一方、リーランドの脳裏にはテレサ・バンクスの姿がフラッシュバックする。テレサを鈍器で撲殺したのは、リーランド。ボブに取り憑かれたローラの父親だった。
2月21日
真夜中、ローラを連れてジャック・ルノーが指定した場所に出かけたボビーは、謀られたことに気づきコカインの売人――ディア・メドウの保安官助手クリフ・ハワードを射殺。コカインと酒で我を失って笑い続けるローラに苛つきながら、遺体を埋める。
2月22日
昨日の約束をすっぽかされたジェームズが自宅まで会いにくるが、ローラは曖昧な返事しかできない。振り向くと玄関先でリーランドが様子をうかがっていた。
その夜、セーラはリーランドに渡されたミルクを飲んで眠りにつき、白馬の夢をみる。
コカインを吸引してベッドに入ったローラは身もだえするように布団を払う。次の瞬間、窓から部屋に侵入したボブが足元から這い上がってきた。ローラは吐息を漏らしながらボブの顔を両手でつかんで問う。
「あんたは誰?何者なの?答えて」
ローラを押さえ込み、首筋に顔を埋めて舌を這わせるボブ。力を振り絞って抗うローラはやがて絶叫する。のしかかっていたのはリーランドだったのだ。
2月23日
「私に近づかないで」
食欲がなく朝食を早々に切り上げたローラは、心配するリーランドにそう告げて登校する。しかし授業は上の空。意識が朦朧とし、気がつけば涙を流していた。気分を変える方法はひとつしかない。ローラはボビーに会い、コカインを受け取った。
その夜、ジェームズと会う約束をしたローラは、壁に掛けていたちいさな絵を見て目を疑う。赤ん坊に食事を与えている天使(4人姉妹の長女と思われる女の子。この子だけ羽根がある)が、どこかへ飛び去るように消えてしまったのだ。
深夜。こっそりと自宅を抜け出したローラはジェームズのバイクで出かける。リーランドはその様子を部屋から見ていた。
ジェームズは峠道を走ってバイクを止める。「あなたはわたしを知らない。わたしには秘密がある。ドナでさえ知らない秘密がある。あなたのローラは消えたの」ローラは愛をほしがるジェームズに別れを告げ、山小屋に向かう。
山小屋でローラは、ジャック・ルノー、レオ・ジョンソン、ロネット・ポランスキーと酒とドラッグにまみれて乱交。「今夜は嫌!」ジャックの縛りプレイには声を荒げて抵抗するものの、巨体で押さえ込まれると為す術がない。
欲望を満たして表にでたジャックは、待ち構えていたリーランドに襲われて昏倒。薄ら笑いを浮かべて出てきたレオは口から血を流して倒れているジャックを見ると、縛られて動けないローラとロネットと残して逃げ去った。
ローラは泣きじゃくるロネットとともに山小屋から引きずり出され、森に廃棄された貨車のなかでひざまづく。そしてリーランドの姿をしたボブと対峙して絶叫する。
「俺だと気づいていたとはな。おまえがほしい」
ちぎった日記のページを手に迫られ、絶望するローラ。神に許しを乞い、後悔のことばを口にするロネット。
次の瞬間、ロネットの頭上にまばゆい光に包まれた天使が出現した。ロネットは手首の縄が切れているのを確認すると、マイクが叩く扉を引いた。ロネットをマイクの足元に転がして扉を閉めるリーランド。ロネットと引き換えにマイクが床に転がした緑の指輪を左手の薬指にはめるローラ。「やめろ!わたしにこんなことをさせないでくれ!」絶叫しながら何度も鈍器を振り下ろすリーランド。やがてローラは動かなくなった。マイクはロネットを放置して立ち去り、リーランドはビニールシートで包んだローラを湖畔に遺棄した。
赤い部屋へ戻ってきたボブに、マイクは言う。
赤いスーツのこびとはマイクの左肩に手をのせ、同じことばを発する。
「わたしの”痛みと悲しみ”を返してくれ。わたしの”ガルモンボジーア”を」
ボブは浮遊したリーランドのシャツに染みついているローラの血を右手で吸い取り、床にぶちまけた。
マイクはクリームコーンを口に運ぶ・・・・・・。

赤い部屋に戻ってきたボブの行動は、マイクが「”ガルモンボジーア”を返せ」としつこいので、ローラの”痛みと悲しみ”を渡してやった、というふうに見えました。
このシーンをみてようやく赤いスーツのこびとが”腕だ”と名乗った理由がわかりました。彼はマイクが切断した左腕を擬人化したキャラクターだったのですね。
2月24日
ブラック・レイクの湖畔でローラの遺体が発見される。
ロッジで善いクーパーと会ったローラは、そこに現れた天使を見て涙を流しながら笑う。


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